弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年2月 1日

レーニンをミイラにした男

著者:イリヤ・ズバルスキー、出版社:文春文庫
 衝撃的な写真がいくつもある本です。まずは病床のレーニンという写真がすさまじいのです。よく知られた精悍なレーニンではありません。レーニンはアテローム性動脈硬化症と2年にわたって壮絶な闘いをしたそうですが、病んで疲れ果てたレーニンの、いかにも精気のない顔には、ただただ哀れみを感じるばかりです。
 レーニンも、妻のクルプスカヤも遺体の保存は望んでいませんでした。ところが、レーニンが死んだその晩には遺体の永久保存が決定されています。そして、専門家が呼び集められました。苦心惨憺のすえ、永久保存に成功するのですが、これは放置しておいていいというものではなく、絶えず手を入れなければならないのです。専門家は特別待遇で優遇されました。著者は親子2代にわたってレーニンの遺体保存に関わってきました。
 スターリンも、ディミトロフも、金日成も、そしてホーチミンも、ロシアの専門家たちによって遺体が保存されました。やはり偶像崇拝ですよね。レーニンの遺体も、本人が生前に希望したとおり、埋葬すべきものではないでしょうか。ロシアでは反対が強いそうですが・・・。
 そして、次に驚く写真がロシア・マフィアのお墓です。ロシア最大のマフィア組織「ウラルマッシュ」のメンバーの墓が立ち並ぶ墓地があるのです。黒く大きな(高さが3メートルあるのもあります)墓石には、等身大で故人の生前の姿が彫られています。平均年齢35歳というマフィア・メンバーの墓は腐敗するロシアのまさに象徴です。ひどいものだと思いますが、ヤクザに取りしきられている日本も、他人事(ひとごと)みたいに笑う資格はないかもしれません。

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