弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年2月 1日

武士の家計簿

著者:磯田道史、出版社:新潮新書
 加賀百万国の算盤(そろばん)係をつとめた猪山家の家計簿が36年間分も残っていたのです。天保13年(1842年)から明治12年(1879年)までの記録です。さすが日記大好きの日本人です。
 「地位非一貫性」という言葉があるそうです。武士は威張っているけれど、しばしば自分の召使いよりもお金を持っていない。商人は大金持ちだけど卑しい職業とされ、武士の面前では平伏させられ、しばしば武士に憧れの目を向け、献金して武士身分を得ようとする。このように権力・威信・経済力などが一手に握られていない状態を言います。地位非一貫性があれば、革命は起きにくく、社会を安定させることにつながります。
 江戸時代の女性は考えられている以上に自立した財産権を持っていた。離婚が多く、それも農民より武士の方が多かった。宇和島藩士の結婚56組のうち、20組がわずか3年で離死別していた。だから、妻の財産も独立的になりがちだった。妻は実家との結びつきをずっと強く保っていた。
 子どもに英才教育をほどこし、立身出世を願うというのは、江戸時代でもかなり強力だったことがこの本からもはっきり読みとれます。日本人って、昔から変わらないな。そんな気を抱かせる本でした。

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