弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年1月 1日

チンパンジーにありがとう

著者:堤秀世、出版社:フレーベル館
 すごい写真に圧倒されます。なんと24歳、芳紀さかりのメス・チンパンジーが高さ5メートルの竹馬に軽々と登って歩くのです。身長120センチ、体重も50キロあります。堂々たる体格です。猿まわしの猿とちがって首に鎖はありません。私と同世代の男性調教師が指示したとおりの芸を次々に演じていきます。そう、ムチはないのです。あくまでもほめて芸を教えるのです。
 チンパンジー・ショーなんて動物虐待だという声が強まり、動物芸はサーカスでもやられなくなったそうです。そんななかで著者は30年もチンパンジー・ショーを続けています。動物への愛情がなかったら、とてもやれないことです。
 この本は写真を見るだけでも価値があります。でも、そう言わずに内容も少し紹介してみます。私がこの本を読み終わってもち歩いていると、原田直子副会長が、「私もチンパンジーには興味があって、たくさん本を読んでるの」と声をかけてくれました。この本もぜひ手にとって読んでみて下さい。
 北大理学部に入学して馬術部に入り、在学中に移動動物園を手伝い、アルバイトとして働いているうちに大学を中退してしまいました。その後、動物調教の厳しさをアメリカに渡って学び、日本に導入しようとしましたが、なかなかうまくいきません。
伊豆シャボテン公園に入ってからも、すぐにはショーを演じることはできませんでした。
 チンパンジーの方も、そう簡単には芸を演じてはくれません。それに、芸を仕込んでも、いずれ公園内の野生の群れに帰さなければいけません。それがまた過酷な試練となるのです。
 ちょっと前屈みにしゃがみこみ、片手を前に出して、「おひかえなさい」という感じで、相手のノドのところに指先をださなければいけない。そして、相手からも同じように手を出されたら、その指先に軽く唇をあてる。それがチンパンジーの初対面の挨拶である。
 この道30年のプロの苦労話です。感激に胸が詰まりそうになりました。

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