弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年1月 1日

中高年自殺

著者:高橋祥友、出版社:ちくま新書
 自殺者は日本では年間3万人台、世界では100万人にのぼっている。日本の自殺率はアメリカより高く、ドイツやフランスよりも高い。都道府県別でみると、宮崎が全国のなかでもズバ抜けて高い(トップは秋田)。大分、鹿児島、沖縄も高い。こう見ると、自己破産の申立が人口比で高いところは自殺率も高いということになりますが、両者に関係があるのかしらん。世界中、女性よりも男性の方が自殺者は多い。女性の方がストレスに柔軟に対応できるから。それにしても、インターネットに「自殺サイト」があるというのは不気味な現象ですよね。
 「死ぬ、死ぬ」と言う人は死なないと広く信じられているが、これは大きな誤解。自殺した人の大多数は、行動を決行する前に自殺の意図を誰かに打ち明けている。これを的確にとらえられるかどうかが、自殺予防の重要な第一歩となる。
 夫が自殺した女性に対して、「いつまでもくよくよしていないで、早く忘れなさい」という言葉は残酷すぎる。たとえ善意であっても、言われた人の心の傷をさらに深くしてしまう。「あなたに何と言葉をかけたらよいか分からない」と言って、黙って手を握った方がどれほどいいか・・・。
 なかなか難しい問題です。この4月以来、私は毎月のように自殺した人の事件や後始末などを担当してきました。この社会の奥底にひそむ闇の深さを感じます。

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