弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2003年11月 1日

江戸の旗本事典

著者:小川恭一、出版社:講談社文庫
 著者は有名な江戸研究家の三田村鳶魚の最後の弟子です。ですから、江戸時代の実相がことこまかに紹介されています。なるほど、なるほど、とうなずくほかありません。
 「丈夫届」というものを初めて知りました。出生届のようなものですが、江戸時代は、幼児の死亡率が高かったので、すぐには幕府に出生を届けず、何年かたって丈夫に生長しているということで届けたというのです。しかも、そのとき「公年」といって、本当の年齢(とし)よりも5歳ほど年長に届け出ていたのです。それは、当主が17歳未満で死ぬと養子が許されずに絶家となるから、その危険を避けるためでした。
 もうひとつ。武家社会のいじめにあった被害者が殿中で刀を抜いて3人を殺し、2人に傷を負わせました。ところが、いじめの張本人は無傷で逃げおおせてしまいました(あとで、御役ご免の処分は受けています)。旗本8万騎といっても、実数は5千人ほどだったことなど、江戸時代の一面をよく知ることのできる便利な本です。

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