弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2003年10月 1日

すべては傍受されている

著者:ジェイムズ・バームフォード、出版社:角川書店
 NSA(米国国家安全保障局)の正体を暴いた本。
 NSAの総予算は175億ドル。職員はCIAとFBIの職員の合計より多い3万8千人。ところが、さらに2万5千人が数十ヶ所の傍受基地で雇われている。三沢空軍基地にはアメリカ陸軍第750軍事情報中隊がいて、インテルサット衛星8をつかってデジタル衛星通信の傍受と分析している。辞書というコードネームのコンピューターが傍受アンテナを通過する何百万の通信の中から、キーワード、名称慣用句、電話・FAX番号を含む監視リストに該当するものがないか一瞬のうちに検索する。要するに、このメールを含めて、インターネットを含むすべての会話と回線のすべてがNSAによって傍受されているということ。
 ところで、映画『13デイズ』でキューバ危機の内幕が描かれているが、この本によると、アメリカ軍の統合参謀本部は陸海空からの本格的侵攻(全面戦争)を強く主張していた、そのため、キューバにあるグアンタナモ米海軍基地をカストロが攻撃したような芝居をうつ計画まで立案していたという。ところがケネディ大統領がこの案を却下して、CIAによるキューバ亡命軍の侵攻になった。この計画が失敗したら、本物の侵攻作戦に代わるだろうとペンタゴンは思っていたが、そうはならなかった。そこで、ケネディ大統領を憎んだ。ケネディ暗殺にアメリカ軍の上層部がかんでいたという背景状況が説明されている。アメリカには底知れない恐ろしさがある。キューバでは失敗したが、インチキ・トリックはベトナムでは「成功」した。トンキン湾でベトナム軍による2回目の攻撃はなかったのにアメリカ軍が攻撃されたと大々的に宣伝し、その「反撃」のために北爆が始まった。今回のイラク攻撃のときの「大量破壊兵器」と同じインチキ・トリックだ。軍人というのは口実がないときには口実をデッチ上げてまでも戦争を始めようとする恐ろしい人種だ。つくづく恐ろしい。知らぬが仏ではあるが、寒気を覚える。それでも、オサマ・ビン・ラディンをアメリカが捕えきれないのはなぜなんだろう?

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