弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2003年8月 1日

人間回復の経済学

出版社:岩波新書
 著者の神野直彦・東大教授は、大学を出て自動車工場の組立工として、また自動車のセールスマンとして働いたことがあるそうです。私の知っている著名なジャーナリストにもそういう人がいます。私も大学時代にセツルメントという学生サークルで、擬似体験を少ししました。
 企業が情容赦なく従業員を解雇しているときに、政府が公務員を解雇もせずに、安穏としているべきではない。政府は率先垂範して、行政改革を実施することによって人員整理すべきだと主張している。公務員を減員して「小さな政府」にする。企業もリストラによって大削減をする。つまり、人間のいない政府、人間のいない企業こそ理想だと考えられてしまう。「そして誰もいなくなった」という社会は、人間の社会ではない。いいかえれば、人間のために社会があり、経済がある。明らかにハンドルを切りまちがえている。
 日本では、民主主義が機能していないと慨嘆するだけで、民主主義を機能させるために、人間の知恵をはたらかせようとはしない。それどころが、民主主義を逆に鼻であざわらうようになり、民が支配すべき公に「官」というレッテルを貼り、よこしまな私を「民」といいくるめ、「官から民へ」という合言葉で、公を私化しようとしている。
 民主主義は人間の知恵の産物である。知恵をはたらかせなければ、民主主義の活性化はありえない。日本のあり方、将来を考えるうえで大いに参考になります。

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