弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2020年8月 8日

タルピオット

イスラエル


(霧山昴)
著者 石倉 洋子とナアマ・ルベンチック 、 出版 日本経済新聞出版社

イスラエルの人口は900万人で、大阪府と同じくらい。面積は四国くらい。
イスラエルの成長をけん引しているのは、ハイテク産業。イスラエルの輸出に占めるIT製品の割合は、10.8%(2017年)。
日本企業71社がイスラエルに拠点を置いている(2018年10月現在)。5年間で3倍に増えた。
イスラエルの食糧自給率は9割超。砂漠で食料を自給するための技術開発も進んでいる。
天然資源のないイスラエルにとって、唯一の資源は、人であり、頭脳だ。
ユダヤ人は、既存の枠組みや前提条件を疑うところから始めて、新しいアイデアを出そうとする。ルールは絶対ではない。なぜダメなのかと問いかけ、議論するのがユダヤ人だ。
イスラエル人は、非常によく質問する。質問することで、お互いの視点の違いを知ることができるし、思考が刺激されて内容が発展し、新しいものが生まれることが多い。
イスラエル人の「質問好き」は、常識や前提条件を疑い、新しい発想での課題解決がイノベーションを生むことにつながっている。
イスラエルでは、正解、不正解がはっきりとした試験は少ない。正解、不正解が明確な試験だと、選ばれる人が画一化してしまうからだ。
イスラエル国民は、18歳(高校卒業)から男子3年、女子2年の兵役義務がある。
タルピオットの選抜プロセスは、高校生の早い段階から始まる。成績、健康状態などの一般的な試験で1万人が選ばれる。そして、物理、数学、コンピューターサイエンスや歴史などの科目について、クリエイティピティを測る試験があって数百人にしぼりこまれる。次に3日間の合宿があり、グループに分けられて、複数回の面接で最終的に50人が選ばれる。このこき、学業成績がトップというだけでは選ばれない。リーダーシップ、チームワーク、創造性が重視される。
タルピオットは、3年間(40ヶ月)のトレーニングプログラム。受講生の4分の1が途中でドロップアウトしてしまう。
過去40年間でタルピオットの卒業生は1000人のみ。卒業生はタルピオンと呼ばれ、イスラエル国防軍のさまざまな部隊に配属される。そして最低でも6年間は従軍し、現場で力を発揮する。
イスラエルにあって、日本にないものは、失敗を許容する文化だ。
スタートアップ(起業)でも失敗を恐れない、これは大切なことだと私も思います。
人材重視のイスラエルで成績優秀な若者を確保し、育成していくシステムがあるというのを初めて知りました。道理で強いわけです。
日本では「教育重視」のかけ声だけで、アベ流の教育改革は一部のエリート層の育成にのみ目を向け、一般ピープルを見事に切り捨てています。これでは日本はますます世界から置いていかれるだけではないでしょうか...。
(2020年3月刊。1600円+税)

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