弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2020年6月 9日

「森友事件」の真相

社会


(霧山昴)
著者 渡辺 國男 、 出版 日本機関紙出版センター

モリ・カケそしてサクラときて、またモリ(森法相)とカケ麻雀(黒川)があり、安倍首相をめぐる黒い霧があまりに多くて何が何だか覚えきれなくなっています。
「森友事件」とは不動産鑑定価格9億5600万円もの国有地が学校法人森友学園にタダ同然で払い下げられた、前代未聞の事件である。
なぜ、この土地が国有地になったかというと、大阪空港に近く、航空機が着陸する飛行ルートの真下にあたるため騒音公害がひどく、国が買収して住民が退去していったから。
豊中市が土地の半分を14億円で国から購入して、中央公園として整備されている。なので、問題の土地も14億円での売買もありうるのに、なぜか1億3400万円で買い戻しという特約つきで売買された。
なにかおかしいと思って調査を始めた人がいた。木村真市議(無所属)だ。
塚本幼稚園では、園児たちが「教育勅語」を暗誦する。そして「愛国行進曲」やら「軍艦マーチ」などの軍歌まで唱和させていた。そして、運動会では、園児たちが、「安倍首相ガンバレ、安保法制国会通過よかったです」と唱えた。
この動画は私もみましたが、腰を抜かしそうになりました。こんな時代錯誤の偏向教育が今どきの日本の幼稚園であっているなんて信じられませんでした。親たちはどうして黙っていたのでしょうか、不思議です。
そして、森友学園の籠池泰典理事長の正体が明らかになった。日本会議の有力メンバーだった。
2015年9月5日、安倍昭恵夫人は、「名誉校長を引き受けました」と記念講演で語った。はじめ「安倍晋三記念小学校」とされていたのを、首相になったので、「瑞穂(みずほ)の國記念小学院」として、安倍首相の昭恵夫人が名誉校長に就任した。
ところが、森友学園は小学校の設置基準を満たしていなかった。それを「クリア」したのは大阪の維新の会の力だった。安倍晋三と松井一郎とは「愛国」教育で意気投合する仲なので、便宜が図られたようです。
鑑定価格が9億5600万円だったのを1億3400万円で売却したのは、地中のごみ撤去費用に8億1900万円かかるという「理由」だった。いったい、8億円もかかる「ゴミ」の撤去とは何なのか...。
結論から言うと、そんなものはなかったのです。要するに、「首相案件」として特別扱いされたのでした。この渦中にいた昭恵夫人の秘書をつとめていた谷恵子氏は沈黙を守った報償としてイタリア大使館へご栄転してしまいます。他方、近畿財務局でつじつまあわせをさせられた赤木氏は悩んだあげくの自死に至ります。 まさしく「天国と地獄」の世界です。
さらに籠池夫妻は逮捕され、泰典氏は長い勾留生活を余儀なくされて現在、刑事裁判の被告人席に立たされています。でも、被告席には、もう一人、昭恵夫人とそのバックにいる安倍晋三首相本人が不可欠です。そこまで追い詰めたいものだと本書を読んで改めて思ったことでした。
ともかく、目まぐるしい世の中ではありますが、軽々しく忘却してはいけない事件であることには間違いありません。
(2020年3月刊。1400円+税)

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