弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2020年4月24日

法医学者が見た再審無罪の真相

司法


(霧山昴)
著者 押田 茂實 、 出版 祥伝社新書

DNA鑑定など、法医学者として多くの刑事事件に関与した体験をもとにしていますので、大変説得力があります。
この本の最後のところに、裁判官が間違った判決を出したことが明らかになっているのに、冤罪として無罪になっているにもかかわらず、有罪判決を書いた最高裁判事が「勲一等」「旭日大綬章」といった勲章を受章したままになっているが、本当にそんなことでいいのかと著者は怒りを込めて疑問を投げかけています。私もまったく同感です。無実の人を十分な審理をせずに誤った判決を下したとき、その裁判官に授与された勲章は国があとで取り上げるべきではないかと私は思うのです。
そこで思い出すのは、最高裁長官だった田中耕太郎です。裁判の当事者の一方と秘密裡に会い、合議の秘密をもらしたうえ、判決内容まで指示され、そのとおりにしたことが明らかになったのです。ひどいものです。砂川事件の最高裁判決は田中耕太郎がアメリカ大使から受けた指示のとおりになったのです。
裁判の独立をふみにじった、こんなひどい男はまさに日本の司法の恥です。ところが、客観的に明らかになっても、今の最高裁は何の措置も講じようとはしません。これでは、要するに同じ穴のムジナだと言うほかありません。司法の堕落です。
著者の鑑定結果と刑事判決が一致しない判決が10件以上もあるということです。これにも驚きます。つまり裁判官は法学者の鑑定を無視した判決をいくつもしているわけで、決して「例外」ではないのです。
先日の大崎事件の最高裁判決にも驚かされました。最高裁の裁判官にはあまりにも謙虚さが欠けていると思います。
弁護士生活46年になる私にとって、裁判不信は刑事裁判に限りませんが、刑事は死刑判決だったり、長期に刑務所に拘留されますので、民事以上に深刻だと思います。
(2014年12月刊。800円+税)

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