弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2020年4月 1日

裁判官も人である

司法


(霧山昴)
著者  岩瀬 達哉 、 出版  講談社

 井戸謙一元裁判官は、裁判官には3つのタイプがあるといいます。
一番多い(5~6割)のは一丁あがり方式で処理する。次に多い(3~4割)のが杜撰処理する。そして、1割にも満たないのが真実を見きわめようとして当事者の主張に耳を傾ける裁判官。これは46年間になる私の弁護士生活にぴったりの感覚です。たまに、人格・識見・能力ともに優れた裁判官に出会うことがあり、本当に頭が下がります。でも、普段は信用のおけない裁判官に対処するばかりです。ええっ、と驚く判決を何度もらったことでしょうか...。
青法協の会員だった裁判官が次々にやめていった「ブルーパージ」は、決して「過去の遺物」ではない。その影響は今に引き継がれている。多くの裁判官を心理的に支配してきたし、今も支配している。つまり、既存の枠組みをこえることにためらい、国策の是非が問われる裁判において、公平かつ公正に審理する裁判官が少なくなった。当時も今も、ほどほどのところで妥協すべきという空気が、常に裁判所内にはびこっている。
平賀書簡問題のとき、札幌地裁の臨時裁判官会議は、午後1時に始まって、午前0時ころまで延々12時間にわたって議論された。しかも、平賀所長は当事者だからはずし、所長代行の渡部保夫判事もあまりに平賀所長寄りなので司会からはずされた。そして、裁判官会議は平賀所長を「厳重注意」処分に付すという結論を出した。これはこれは、今では、とても信じられない情景です。
最高裁の判事と最高裁調査官とのたたかいも紹介されています。滝井繁男判事と福田博判事の例が紹介されています。最高裁調査官は最高裁判事をサポートするばっかりだと思っていましたが、実は意見が異なると、最高裁判事を無視したり足をひっぱったりしていたのですね。ひどいものです。
また、矢口洪一最高裁元長官が陪審制の導入に積極的だったのは、長官当時に冤罪事件が次々に発覚したことから、裁判所の責任のがれのための「口実づくり」だったというのも初めて認識しました。それでも私は裁判員裁判の積極面を評価したいと考えています。
「ブルーパージ」のあと、若手裁判官が気概を喪い、中堅裁判官に覇気がなくなった。部総括(部長)に負けないで意見を述べる気概のある裁判官が減り、部総括にしても、部下の意見を虚心に受けとめるキャパに欠ける人が増えている。これまた、私の実感と一致するところです。
こんな裁判所の現状を打開する試みの一つが裁判官評価アンケートです。これはダメな裁判官を追放するというより、ちょっぴりでもいいことをした(している)裁判官を励まし、後押しをしようというものなんです。
ぜひ、あなたもその趣旨を理解して、ご協力ください。
(2020年1月刊。1700円+税)

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