弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2020年2月29日

余力ゼロで生きてます。

人間


(霧山昴)
著者 水野 美紀 、 出版  朝日新聞出版

43歳での出産の前後と育児の辛くて楽しい日々が赤裸々に描かれていて、すごいよね、女性は・・・と驚嘆しつつ、最後まで面白く一気に読み通しました。
妊娠したら、コーヒーも紅茶もダメ、大好きな辛いものも、好きなお酒も飲めない。代わりにたんぽぽコーヒー(まるで戦前のヨーロッパの話です)、そして、デザートはスイカ・・・。これはこれは大変なことですね。1日じゃありませんからね・・・。
人間の脳は、辛い記憶を忘れる機能をもっている。忘れられるから、生きていける。
私も、これは本当にそう思います。年齢(とし)をとったから忘れるのではなくて、忘れるのは、忘れられるのは、実は、とてもいいことなんだ、今ではそう思うようにしています。
出産したあとの母体は、全治1ヶ月の大ケガをしたようなもの・・・。うひゃあ、そ、そうだったんですか・・・。それは知りませんでした。失礼しました。
お産が命がけのものだと身をもって知った。こんな痛い思いは二度といやだと思った。ところが、1年たったら、あのトラウマレベルの痛みの記憶は薄れ、若かったら、もう1人産みたかったなあ・・・、なんて思っている。
保育園に通うようになって、次々に鼻水状態になっていく。治りかけてはうつされて・・・というループにふりまわされる。ところが、医師は、こうして抵抗力が養われて、強くなっていくのだという。弁護士である私も、医師ではありませんが、まったく同感です。無菌培養ではひ弱い身体のままだと思います。たくさんの雑菌にふれてこそ、鍛えられる。そのように私も思います。
育児に比べたら、仕事なんてラクなもの。専業主婦の方が絶対に大変だ。どんなに可愛い我が子でも、1人で不安をかかえながら、毎日、睡眠不足で逃げ場もなく向きあっていたら、可愛いものも可愛いと思える余裕すらなくなってしまう。
子どもも泣き出したものの、何で泣いているのか自分でも分からなくなっていることが多い。そんなときには、くすぐって笑わせるのも効果的な対処法だ。
子どもが泣いて、原因が分からないときは、次の3つを疑ってみるとよい。
①自分でやりたかった、で大泣き。
②秩序(いつものようになっている)が乱れた、で大泣き。
③イヤイヤ期からくる大泣き。
そして、「ママ手伝っていい?」と問いかけてみる。
かわいらしいイラストがまた格別に素敵で、思わずクスッと笑ってしまいます。
さすがは、女優だけでなく、作家・演出家というだけあって、軽くすいすいと読ませます。
(2019年12月刊。1300円+税)

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