弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2020年1月 4日

宇宙から帰ってきた日本人

宇宙


(霧山昴)
著者 稲泉 連 、 出版  文芸春秋

ずいぶん前に、このコーナーでアメリカの宇宙飛行士たちは実際には月面着陸していないという本(いわゆるトンデモ本)を紹介して、叱られたことがあります。トンデモ本を真に受けてしまったわけです。9.11についても陰謀論があるようで、フェイクニュースが横行する世の中ですので、なかなか真実を見抜くのは大変です。
宇宙に飛び出した人類は、今では国際ステーションをつくって長期滞在していますし、日本人も、そのなかで頑張っているのですよね・・・。でも、私は、例のチャレンジャー爆発事故を「目撃」して以来、宇宙旅行なんて、ますます怖いと思うばかりです。
その点、ロシア(旧ソ連)の宇宙船ソユーズ号は大変な安心感があります。
ソユーズは、1957年のスプートニク1号の打ち上げに使われたR-7Aを改良したもの。ソユーズは2000回近くの打ち上げに使用されており、その成功率は97%をこえる。現在も年間10機以上が打ち上げられるほど、信頼性には定評がある。ただし、2018年10月に打ち上げに失敗し、発射直後に緊急着陸するという事故も起こしている。
ソ連時代に爆発事故を起こして公表されなかったという事故もあるようですので、手放しで安全だと評価できないのかもしれませんが、この分野ではアメリカよりソ連時代をふくめてロシアのほうが宇宙船の安全性は確保されているようです。
それにしても、宇宙から地球の公害による汚染がはっきり見えるという指摘には、そんなにひどいのかと驚きました。なにしろ、ベトナム戦争のとき、地上の戦火まで見えたというのですから、宇宙船から地球は驚くほど、よく見えるのですよね・・・。
1990年にソ連の宇宙船ソユーズに乗って日本人として初めて宇宙旅行した秋山豊寛氏は、地球の青さというのは、地球自体は青いのではなく、地球と宇宙との境目の美しさを指していると語っています。
このとき、TBSはソ連に50億円支払ったとのこと。まさにバブル現象でした。1986年にチャレンジャー爆発事故が起きて、毛利衛氏が日本人初の宇宙飛行士になるはずだったのが、順番が入れかわったのです。秋山氏は、ひどい宇宙酔いに悩まされたとのこと。
地球に帰還した直後は、動力酔いに悩まされる。これは筋力が弱ったのではなく、三半規管によるバランス感覚がなくなり、まっすぐ歩けない、ふらふらと千鳥足になってしまう現象が起きる。
宇宙船内では、上下の概念がなくなってしまう。それに慣れた人が、地球に戻ってくると、危ない目にあってしまう。
宇宙船のなかでは、無動状態なので、ニュートンの作用、反作用の法則、つまり押せば押されるという法則を身体で実感・理解できる。
毛利衛氏は、私と同じ団塊世代。1992年にスペースシャトルで宇宙に行った。このときの地球の人口は55億人。2度目は2000年、NASA宇宙飛行士として行ったとき、地球人口は61億人。そして今や77億人。2050年には100億人になると予測されている。はたして、地球は人間をそんなにかかえこめるのか・・・。
(2019年11月刊。1650円+税)

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