弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2020年1月 2日

深海―極限の世界

生物


(霧山昴)
著者 藤倉 克則・木村 純一 、 出版  講談社ブルーバックス新書

太陽光のうち赤っぽい光は水深3メートルまでにその大半が吸収され、それより深くには届かない。短い波長の光も水深200メートルまでに吸収されて、ほとんど人間の目で見えなくなる。ただ450ミリメートル前後の波長の青色領域の光のみが水深1000メートル付近の中層まで達している。水深1000メートルより深い海は暗黒の世界であり、自ら光を発する生物(発光生物)以外に光を見ることはない。
深海では、光が届かなくなるうえ、水圧が上昇する。
今では、海底下2.5キロメートルにまで微生物が存在していることが判明している。
地球表面の7割は海、水深200メートルより深い海が深海、海の平均深さは3800メートル。水深200メートルの水中には、植物プランクトンや動物プランクトンの死骸、生物の排泄物が凝縮し、埃(ホコリ)のかたまりのようになって沈降する「マリンスノー」が見える。このマリンスノーは、深海に降り注ぎ、深海生態系を支える食物となる。
深海の暗闇では、発光は生存に有効。発光の役割は、エサをおびき寄せるため、捕食者に襲われたときの威嚇、同種間のコミュニケーション、カウンターイルミネーションで姿を消して捕食者から見つかりにくくするため・・・と考えられている。
深海は水圧が高いため、100度以上になっても海水は沸騰せず、水深1000メートルでの沸点は300度以上になる。
深海では有機物の量が少ないため、一般に生物群の生息密度は低く、生物の種の多様性は高い。
海底にある湧水域はプレートの沈み込み帯で、沈み込むプレートの上側のプレート上に存在する。
世界中の海底の95%は太陽の光が届かい深度にあり、温度は4度以下、圧力は数十気圧から100気圧になる。そして、酸素がないところがほとんど。大気中に放出された二酸化炭素は、2分の1が大気中に残り、4分の1は陸上の森林が吸収する。最終的に残った4分の1は海洋に吸収される。
海中のプラスチックが海洋生物にどのように影響しているのか、少しずつ究明されている。しかし、マイクロプラスチックが深海に堆積していることの研究は遅れている。
プラスチックは大変便利なものなので、私もずっと使ってきましたし、使っています。ところが、生態系に大きな悪影響を与えていることを知り、なんとかしなくては・・・と思いはじめました。
深海にうごめく生物に光をあてた貴重な新書です。私が大学生のころは、まだプレートテクトニクス現象について、そんな馬鹿なと一笑に付されていました。今では、大陸が動くものだというのは完全に定説になっています。これで世の中の見方が私のなかでも、すっかり変わってしまいました。
「しんかい6500」に乗ったら水深6500メートルまで潜航できるそうですが、暗黒な闇のなかにずっといたら気が変になってしまいそうです。学者はえらいですね。
(2019年5月刊。1100円+税)

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