弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2019年8月24日

スペイン巡礼

スペイン

(霧山昴)
著者 渡辺 孝 、 出版  皓星社

団塊世代(1950年生)の男性が1ヶ月あまりのスペイン巡礼一人旅に出た記録集です。
表紙のカラー写真がいいですね、果てしなく広がる大草原の一本道を世界各国から来た巡礼たちが1人で、カップルで、集団でテクテクと自分の足だけを頼りに歩いていきます。
といっても途中で、膝や足が痛くなると、バスやタクシーも利用し、一休みしながら歩いていくのです。
朝5時20分に起床し、朝食をとって6時40分に出発。外はまだ暗い。歩いている途中で夜が明ける。夜明はいつも感動的だ。
最近、スペイン巡礼に行く人が急増している。2006年に10万人となったあと、2017年には30万人をこえた。10年で3倍。日本からの巡礼者は2005年に282人だったのが、2017年に1500人近くへ5倍も増えた。といっても、まだまだですよね。著者は日本人の若者、女性も男性も、に出会っていますが、同じくらい韓国人も多いようです。
前にこのコーナーで大阪の弁護士の巡礼体験記を紹介したと思います。斉藤護弁護士(1939年生まれ)が2007年4月から6月にかけて、「サンチアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」を歩いたのでした。『アシナガがゆく』という写真集にまとめられています。古稀の年が近くなると、一人旅、しかも人里から隔絶した荒野ではなく、同じように歩いて巡礼の旅をしている仲間がいるところを歩きながら、自分の人生をふり返り、将来を見すえるというのは、とても大切なことだと思いました。
泊まるところも、巡礼者用の安宿(アルベルゲ)だけでなく、ときにそれなりのホテルにも泊まっています。ただ、私には出来ないと思ったのが、スマホを使ったホテルなどの予約です。昔はありえなかったものですが、今はどうやら必須の道具のようです。そうなると、スマホをもたない私には無理だということになります。
そして、語学です。日銀に長くつとめ、フランス駐在の経験もある著者は、英語はもちろんのこと、フランス語も話せます。そして、スペイン語も必死に勉強したとのこと。やはり旅先ではその大地の人と会話ができるかどうか決定的ですよね。ですから私はスペインには行きたくありません。行くなら、やっぱりフランスです。フランスなら、カタコト以上の会話ができるので、なんとかなるのです。
それにしても、巻末に照会されている、たくさんの紀行文には驚きました。その半数は女性です。日本人女性は昔も今も行動的ですね・・・。
読んで楽しい巡礼記です。苦しいこともあり、辛いこともないではないけれど、たくさんの出会いもあり、やっぱり行って良かった、そして読んで良かったと思える本でした。
(2019年5月刊。2000円+税)

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