弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2019年8月14日

脳はなにげに不公平

人間・脳

(霧山昴)
著者 池谷 裕二 、 出版  朝日文庫

ヒトは表情で嘘をつくことができる。しかし、バレる。目が笑っていない。眼輪筋は不随意筋なので、ごまかせない。
男性は、女性の目については感情が上手に読めない。これは、男性は、その身を守るため、相手の感情や危険な表情を読むのに脳が特化したからという解説がついています。
顔写真から喜怒哀楽を読みとるテストをすると、女性のほうが男性より上手に読みとる。
ただし、「怒り」の感情を読みとるのは男性のほうが素早い。これは、野生時代の本能が残っているからでしょうか。
快感回路が作動したとき、人は「自分だけのものにしておくのは、もったいない」、「私は、こんな秘話を手に入れたぞ」と、他人と情報を共有したくなる。つまり、「人に伝えたい」という感情は、相手への思いやりではなく、それを通じて自分が快楽を得るための自己満足的な行為である。
この一文は、まさしく、毎日、書評を書いてアップしている私にも共通するものです。大いに意を強くしました。
人がもっている視線を読む能力は驚異的。5メートル離れた人が、自分を見ているのか、自分から10センチ右隣にある物体を眺めているかを区別できる。
第二言語の習得は、環境よりも遺伝要因が強く、71%を占めている。
脳には、顔情報を処理する専用回路(FFA)がある。
DNA変異の原因はほとんど父親の精子にある。年齢が1歳ふえるごとにDNA変異が平均2個増えている。そして、これには父親の年齢がカギを握っている。年齢が高ければ高いほど変異の数が多くなる。つまり、1歳ふえるごとにDNA変異が平均2個ふえる。すなわち、高齢の男性は、自分の遺伝子が、より不正確に、子孫に受け継がれるということ。
狩猟する男性は迷わないために位置に、採集する女性は食あたりしないよう草木の識別に、その能力を磨いてきた。
10代の脳は、一番つかいものにならない。何か新しいものを吸収するためには、それなりの大きさの受け皿が必要。受け皿があると、新しいこともどんどん学習できる。
10代は人生経験がまだ浅いから受け皿が小さい。だから、丸暗記するしか方法がない。
30代以降、40代や50代のほうが脳はよく働いているという側面がある。
肥満な人ほど睡眠時間が短い傾向にある。これは、睡眠不足になると、食事を制限しようという自制心そのものが減ってしまうから。
脳と人間の体について、相変わらず大変タメになる本でした。
(2019年5月刊。620円+税)

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