弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2019年6月25日

先制攻撃できる自衛隊

社会


(霧山昴)
著者 半田 滋 、 出版  あけび書房

安保法制が施行されて3年たった。日本は戦争に巻き込まれていない。では、あのとき私たちは取り越し苦労をしたのか・・・。安心するのは、まだ早い。今は、たまたまアメリカが戦争をしていないから、日本も静かなだけ・・・。
アメリカが世界のどこかで戦争をはじめ、日本に応援を求めてきたときには、日本はすぐに自衛隊を世界中のどこにでも送り込み、アメリカと一緒になって戦争することになる。
アメリカが戦争していないからといって、安保法制は休眠してはいない。南スーダンで「駆けつけ警護」が命じられた。ところが、それが本格的に実施される前に自衛隊は撤退した。
それは、安倍首相が国会で自衛隊員に死傷者が出たらどうするかと追及されて、責任をとると明言したから。死傷者が出ないように撤退させたわけだ。
そして、自衛隊のアメリカ軍防護活動も始まっている。しかし、その状況は国民に公表されていない。
日本はアメリカから攻撃型武器をどんどん買わされている。かつては毎年500億円ほどだったのが、今では桁ちがいの7000億円にまではね上がった。
武器を売り込みたいアメリカにとって、日本は文句ひとつ言うことなく、ハイハイと、どんな高額かつ欠陥品であっても買ってくれる天国のような国になっている。
アメリカは、日本の国土を自分に都合よく利用させてもらっているので、その片手間に日本の防衛も手伝うといっているにすぎない。これが日米安保条約の真の姿。なので、日本が世界最高額のアメリカ軍経費を負担しなくてはいけない義務なんてない。
かつては外務省にも良心的な幹部官僚がいたようです・・・。
アメリカも日本も、軍部と支配・権力層は絶えず、「敵」を探している。「敵」がいないと、とたんに防衛費は削減され、武器や隊員も削減されること必至なので、「敵」つまり「日本に対する脅威」なるものを必死で探し求めている。しかし、見つけられない。
秋田と山口に建設されようとしているイージス・アショアは、当初は1基800億円だとしていましたが、今では1340億円の購入費のほか、維持・運営費を加えると、5000億円近い。そして、日本の秋田と山口に建設するのにこだわっているのは、実は、アメリカのハワイとグアムを防衛するために立地上として都合がいいからであって、日本防衛とは関係がない・・・。うむむ、なんというバカげたことでしょうか・・・。5000億円もの予算を教育・福祉にまわせば、日本社会もどんなに住みやすくなることでしょう・・・。
軍事予算をどんどん増やしていけば、福祉予算の切り捨ては必至です。介護保険料を引き上げ、生活保護費の引き下げはまったなしで実現することでしょう。まさしく、お先真っ暗です。
なんのために軍事予算を増大させようとしているのか、どうして年金に頼って生活できないほど年金額が低いのか・・・。
いったい、教員はまともに日本という国の政治を子どもたちに教えているのか・・・。
自分たちの生活の実際を直視し、年金問題では、各人が2000万円を積み立て投資が求められていることを自覚すべきだ。いやはや、そんなことが、自覚したとしても出来る人が日本全国にいったいどれくらいいるでしょうか。
軍事的機能、軍事予算そして生活費に与える多大なマイナス影響・・・。これを考えたら安倍改憲なんて、まっぴらゴメンだということになります。
今、ひとりでも多くの人に読んでほしい本です。
(2019年5月刊。1500円+税)

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