弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2019年6月10日

探検家の事情

人間

(霧山昴)
著者 角幡 唯介 、 出版  文春文庫

著者のスリルにみちみちた冒険の旅は、その迫真の描写に接して、思わず息をひそめてしまうほど圧倒されてしまいました。『空白の五マイル』、『極夜行』など、読んでいる途中で、息が詰まって投げ出したくなりましたが、でも、このあとどうなるんだろうと思わず頁をめくる手が速く動いていきました。
この本は、そんな著者の、信じられないとぼけた人柄もにじみ出てくる内容です。いわば楽屋裏のオチ話のオンパレードになっています。
著者に向かって投げかけられる質問。なぜ、冒険をするのか・・・。これは冒険をしない人に、なぜあなたは生きるのかと問うのと同じくらい、回答に窮する質問だ。
氷点下40度の寒さに支配される世界を、1日30キロも歩いていく。そのときには1日に5千キロカロリーは人体の健康保持に十分なレベルではない。大人が極地で肉体運動を続けるのには、少なくとも1日8千キロカロリーが必要なのだ。
著者は忘れ物や落し物が多いという「自慢話」を紹介しています。
記憶力があまりよくないうえに、集中力が非常に高く、せっかちなので、ある一つの動作から別の動作に移った瞬間、その新たな動作のほうに意識が集中してしまい、前のことが完璧に意識の外にはじき出されてしまうことになるからだ・・・。ええっ、そ、そうなんですか。
著者はスマホを持っていない。不肖、私もスマホはもっていません。がさつで慎重さに欠ける人間である著者の「唯一の取柄」は、立ち直りが早いこと。これは、いいことですよね・・・。
北極の村に滞在するときには、肉を生食することになる。生肉は、身体にビタミンを補給してくれる。口内炎で悩んでいたのが、生肉を食べると、たちまち良くなった。肉で一番おいしいのはシロクマの肉。シロクマの肉は「王候貴族の料理」と言われている。
シロクマの肝臓(レバー)を生で食べると、ビタミンA過剰をひきおこし、吐き気やひどい頭痛に苦しめられる。
コウモリの肉は「深みのある味」だそうです。ご相伴したくありませんね・・・。
コウモリの頭蓋骨に穴をあけ、脳髄をずるずるっとすする。ドロッとしていて濃厚で、少しだけ苦味のきいた独特の味がする。
うひゃあ、コウモリなんて、まったく食べようという気分にはなりません・・・。
家庭と探検生活をいかにして両立してきたのか、その悩みや葛藤が紹介されています。
(2019年4月刊。690円+税)

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