弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2019年5月14日

朝鮮人強制連行

日本史(戦前)・朝鮮


(霧山昴)
著者 外村 大 、 出版  岩波新書

朝鮮人の強制連行をめぐっては政府や議会そして企業側にもさまざまな相反する意見があり、朝鮮総督府や朝鮮社会にもいろんな矛盾、利害相反の状況があったことを知ることが出来ました。
当時の朝鮮社会は就学率が低く、文盲の人も少なくなかったということを改めて知りました。朝鮮人の就学率は、1935年に17.6%(男子が27.2%、女子は7.3%)。1936年の日本語理解率は9.8%(男子は16.1%で、女子は3.4%)。
朝鮮人の就学率が上昇するのは、戦時期であった。
炭鉱では、増産を担うべき十分な労働力を確保できずにいた。
朝鮮総督府は、1937年6月27日付新聞で、九州の炭鉱からの朝鮮人労働者の斡旋の信頼に対しては許可しない方針であった。その理由として、それまでの炭鉱が朝鮮人を安い賃金のもとで酷使した「賤待事実」があったため。朝鮮統治の責任者としては、詐欺的募集と悪辣な労務管理が朝鮮人の不満を強めることに警戒せざるを得なかったからである。
官僚だけでなく、民間にも、朝鮮人導入については、否定的意見があった。それは戦争が終了して平時に戻ったときの失業問題が予想されることなどからであった。しかし、朝鮮人労働者の導入への消極論は、日本内地の炭鉱等での労働力不足の現実の前に押し切られた。
当時の朝鮮では、むしろ駐在所の巡査のほうが面長より権力をもっていると見なされるような実情があった。
1939年(昭和14年)は、かつてない大旱魃のあとだった。人びとは木の根、草の根を食べて飢えをしのいでいた。そこで募集をかけると、救いの神があらわれたといって人々が集まってくる。それでも、朝鮮総督府としても、農業生産の維持、さらには朝鮮の工業化のための労働力の確保の重要性は十分承知していたので、言われるがまま日本内地へ労働者を送り出そうとしていたわけでない。
2年間という期間経過したら、朝鮮に労働者を戻さなければならないというシステムは、定着を防ぐという意味では、日本内地の治安・労働行政担当者の思惑が一致していた。
韓国社会の中心人物が非協力的であれば、企業から派遣された人物が必要な人員を確保することが可能だった。
官斡旋は地域社会の事情を考慮することなく、そこに責任もつながりもない労務補助員が、自分の所属する企業のために労働者確保のみを追求することを制度化したものだった。朝鮮で徴用工の発動が遅くなったのは行政機構が貧弱だったことにもよる。徴兵対象者の戸籍の記載事項すら不正確な状態であった。
そして、朝鮮社会では、動員忌避がますます強まっていた。面の労務係は、動員で手一杯。面の人々は徴用を襲って労務係を仇的のように考えている人々がいた。
女子は全員が文盲、男子青壮年の7割は文盲。徴兵準備のための錬成を受けた男子の日本語ボキャブラリーは、日本人の幼児と同じレベル。朝鮮から来た者で、戦争については、100人のうち5人しか知らなかった。
日本内地の炭鉱労働者全体では戦争末期でも日本人が70%を占めていた。
朝鮮民衆はあきらめて無抵抗でいたのではなかった。徴用が自分たちの生活の破壊につながりかねないとみていた人々は必死の抵抗を試みた。なかには、面の職員が徴用対象となる面民を引率して山中に隠れようとして警官に見つかって衝突するという事件も起きている。面職員にとって、動員計画のための要員確保はよけいな業務の負担であるばかりでなく、危険を伴う仕事にすらなりつつあった。動員をさけようとする民衆の抵抗、動員によって働き手を奪われた家族の怨嗟から、危害を加えられるケースも発生していた。
村落の朝鮮人有力者らは動員に非協力ないし反対していた。それは、同情していたというより、最下層の朝鮮人が相対的に良い日本内地の職場を選択することによって、村落で農村労働者が減り、その賃金が上昇するのが痛手だったから。
炭鉱でも、熟練労働者を確保して操業効率を良くしようという意見もあった。
さまざまな複雑な思惑と利害があるなかで強制連行がすすんでいったことがよく分かりました。大牟田の三池染料でも朝鮮人連行があり、私の亡父は徴用係長として、その責任者だったのでした。
(2012年3月刊。820円+税)

日曜日の午後、梅の実ちぎりをしました。驚いたことに今年は梅の実が少ないのです。昨年の3分の1ほどしかありません。いわゆる裏作の年なのでしょう。それでもザル一杯にはなりましたので、梅酒が2瓶つくれそうです。
ジャガイモの生育が遅れています。隣のジャガイモは私より1週間以上も遅く植えたのに、緑々した葉っぱが繁っていて、早くも花が咲いています。うちは花どころではありません。隣の芝生は青いといいますが、うちのジャガイモたちは大丈夫かしらん・・・。

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