弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2019年4月21日

めんそーれ!化学

社会

(霧山昴)
著者 盛口 満 、 出版  岩波ジュニア新書

私の息子が埼玉にある自由の森学園にいたとき、教師の一人だったのが著者です。なかなか変わった元気のある教師がいるものだと思っていましたら、その後、著者は沖縄に移住し、沖縄では夜間中学で理科を教え、今は沖縄大学で理科教育を担当しています。
この本は、夜間中学で生徒たちに化学を教えている授業風景を活字にしたものです。
夜間中学の生徒は、60代、70代の人たち、圧倒的に女性です。彼女らは教師の話に自分の生活体験を踏まえて反応します。その変わったやりとりが、本書の魅力となっています。
夜間中学での授業は、国家検定の教科書とは無縁のようで、初日の化学講話は、なんと肉じゃがをつくることから始まります。そして、ロウソクづくりでロウソクの化学を学びます。
よく似た外観をしているけれど、ゼリーと寒天、ナタデココは原料も成分も異なっている。ゼリーは、動物のコラーゲンが原料で、タンパク質。寒天は、テングサなどの海藻がつくり出したアガロースと呼ばれる炭水化物の仲間。ナタデココは、ココヤシのジュースを微生物を発酵させることによってつくられる。その成分はセルロースだ。セルロースは、それを分解できるのは、微生物とシロアリ。
ヤギは紙を食べない。ヤギ自身はセルロースを分離することはない。セルロースを分解できるのは、微生物とシロアリ(そして一部のゴキブリ)のみ。
化学の授業を通して、沖縄のおばあたちの楽観的な生活を知ることができ、化学もまた現実のなかで生きていると思ったことでした。
(2018年12月刊。880円+税)

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