弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2019年4月14日

踏み絵とガリバー

日本史(江戸)

(霧山昴)
著者 松尾 龍之介 、 出版  弦書房

イギリス人のスウィフトの『ガリバー旅行記』に日本が登場してくるなんて、初めて知りました。しかも、踏み絵のことが書かれているというのです。さらに、夏目漱石が、この『ガリバー旅行記』を絶賛しているというのです。世の中には、驚くことが多いですね。
『ガリバー旅行記』は、4篇から成っていて、第一篇は「小人国」、第二篇は「大人国」だけど、第三篇は、太平洋上の島々を訪問したもので、そのなかに日本が含まれている。
そして日本に上陸するときには、イギリス人のガリバーはオランダ人になりすます。そして、江戸で日本の皇帝(将軍)に会ったとき、オランダ人がしている踏み絵の儀式を免除してほしいと願った。
踏み絵は日本人だけで、オランダ人が出島でも踏み絵をさせられたことはない。
オランダ人は、キリスト教徒として恥ずべき行為(踏み絵)までして、日本との貿易を独占しているという噂が立っていた。それは、嫉妬ややっかみにもとづくものだった。
イギリスは、オランダに対して常にライバル意識をもっていて、ついには戦争までするようになった・・・。
スイフトが『ガリバー旅行記』を書いた(1726年)のは、59歳のときだった。デフォーの『ロビンソン・クルーソー』と同じころだ。
『ガリバー旅行記』は、皮肉やブラックユーモアに満ちた、大人のための文学である。
ガリバーが旅行する国々のなかで、唯一、日本だけが実在する。
ヨーロッパの人々は、マルコ・ポーロ以来、ずっと日本に熱い眼差しを向けてきた。ヨーロッパの人々は、現代日本人が想像する以上に、日本のことをよく知っていた。しかも、それがスキャンダラスなだけに強く印象が残った。
九州諸藩で踏み絵が続けられたのは、踏み絵が同時に戸籍制度として機能していたから・・・。うむむ、なるほど、そういう側面もあったのですか・・・。
(2018年10月刊。1900円+税)

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