弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2019年1月27日

大名権力の法と裁判

日本史(江戸時代)


(霧山昴)
著者 藩法研究会 、 出版  創文社

江戸時代の藩政において法令がどのように機能していたのか、学者の皆さんが、それぞれの研究成果を発表した論文集から成る本です。主として刑罰法規とその運用状況が語られています。私の関心は民事、とりわけ分散にありましたので、それを紹介します。
分散とは、今でいう破産のことです。
元禄期の岡山藩における分散の実情が紹介されています。
分散の開始にさいしては、債権者と債務者の同意が要件であった。債権者が債務者を破産させて債務を弁済させるのと、債務者が破産を申立てて債務を弁済するのと、二つあった。つまり、債権者申立の破産と自己破産の二つがあったわけです。
債権者が分散によって決着したので、「以後申分無之」と確言したときには、たとえ債権者は僅少の弁済しか得られなかったとしても、それで満足し、今後は債務者に対して弁済を請求しないと保証したことを意味する。
分散は、身代のつぶれた債務者に対する債権者の温情による債務処理という側面をもっていた。つまり、分散によって債権者は、早期に弁済を得られるが、僅少の弁済額で満足せざるをえない危険を負担し、他方、債務者は、今後債務を弁済する責任を免除された。このように、分散は、いわば経済的に破綻した債務者に対する債権者の温情による債務処理でもあった。
江戸時代にも破産手続というべき分散の手続があり、それなりに合理的な手続だったことが理解できました。
(2007年2月刊。8000円+税)

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