弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2018年8月19日

戊辰戦争の新視点(上)

明治

(霧山昴)
著者 奈倉 哲三 ・ 保谷 徹 ・ 箱石 大 、 出版  吉川弘文館

幕末から明治にかけて戦われた戊辰戦争のとき、諸外国がどのようにみていたのか、興味深いものがあります。
日本での内戦は欧米の死の商人たちにとっては絶好のビジネスチャンスだった。大量の武器弾薬が開港地で取引されることになった。1868年に横浜から輸入された小銃は10万6千挺、長崎でも3万6千挺だった。新政府の下にあった横浜・兵庫・大坂・長崎で輸入された銃砲・軍需品は総額273万ドル、箱館だけでも5万ドルの取引があった。
戊辰戦争は開港地の支配をめぐるたたかいでもあった。なかでも焦点になったのは新潟・・・。
フランスのロッシュ公使は江戸幕府と強い結びつきをもっていたので、一貫して新政府に不信感をもち続けた。結局、ロッシュは帰国を命じられた。
アメリカの新政府承認も大きく遅れた。アメリカのヴァルケンバーグ公使は、ミカド政府を復古的な政権と考え、排外主義に傾くのではないかと疑っていた。アメリカは、日本の内戦が長引くものと予想していた。
戊辰戦争のとき、奥羽越前列藩同盟の事実上の軍事顧問であり、「平松武平衛」と名乗っていたシュネルはオランダ領事インドに生まれ、ドイツ語圏そのあとオランダで成長した。そして、横浜のプロセイン領事館で書記官として勤め、ブラント公使の通訳として働いていた。武器商の弟エドワルトとともに同盟諸藩への武器調達の仲介をしていた。
ブラント公使は、北海道について、ドイツ人の植民拠点となりうるという報告をドイツ本国に送っていた。ドイツは大英帝国に遅れをとっていて、それへの対抗心があった。
幕末から明治にかけての動きのなかで、欧米諸国の視点は見逃せないこと、その果たした役割は決して無視できないものだと痛感させられる本でした。
(2018年2月刊。2200円+税)

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