弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2018年7月19日

ソウルの市民民主主義

韓国


(霧山昴)
著者 白石 孝 ・ 朴 元淳 、 出版  コモンズ

いま、日本人は韓国の人々から大いに学ぶべき、いや学ぶだけでなく、見習って行動に立ち上がるべきだと痛感します。
ソウルの広場を埋め尽くしたキャンドル革命は朴クネ元大統領の弾劾を実現し、刑務所に入れることに成功しました。同じように身内優先の利権政治をすすめているアベ首相は今ものうのうと高笑いして夫婦そろっての外遊しながら、なんと支持率を回復しているなんて、まるで間違ったアベコベ政治の典型です。
韓国では、キャンドル革命を原動力として文大統領を実現しました。朝鮮半島の平和確保を至上命題として政治生命を懸けた必死の取り組みが南北会談の実現そして米朝共同声明に結実したのです。これから紆余曲折は何度もあると思いますが、朝鮮半島の平和に向かって一歩一歩すすんでいくことは間違いありませんし、また、それを目ざして私たち日本人も応援すべきです。
この本は、キャンドル革命を支えたソウル市長との対話をふくんでいます。何十万人という人々が広場に集まることを想定して、ソウル市は万全の支援・救援措置を講じたのでした。衛生面、トイレ、ゴミ収集、安全面、地下鉄の運行など、至れり尽くせりです。すごいです。
そして、ソウル市は、朴元淳市長(人権派弁護士でした)のもとで、非正規職員を大胆に正規職員に切り替えていったのです。そのため人件費支出が増大したかと思うと、かえって減少したのです。なぜか・・・。人材派遣業への支払うマージンがなくなったからなのです。
そして、非正規から正規に転換した人については「校務職」と命名したのでした。プライドの尊重です。朴元淳市長は3大公務の実現に取り組んでいます。
その一は、小・中学校給食の完全無償化、その二は、ソウル市立大学の授業料半減、そして、その三が先ほどの非正規を正規へ転換する、です。
人権派弁護士が大統領とソウル市長になって大活躍しているのを知ると、いよいよ日本の人権派弁護士も負けてはおれないという気分になってきます。
ルポあり、ソウル市長との対談ありで、とても充実した韓国レポートになっています。
(2018年3月刊。1500円+税)

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