弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2018年6月15日

私はドミニク

社会

(霧山昴)
著者 ドミニク・レギュイエ 、 出版  合同出版

国境なき医師団(MSF)という組織は知っていました(MSFはフランス語です)。でも、国境なき子どもたちという組織があるのは、この本を読んで初めて知りました。
ドミニク(著者)は、MSF日本の事務局長でした。10年つとめたあと、今の国境なき子どもたちを設立したのです。
ホームレスの人々が路上生活するに至った原因は、人道援助団体にとってはどうでもよいこと。病気、親類縁者との関係疎遠、社会からの疎外、失業など、路上生活に至った原因はさまざまだけど、その原因を苦境にある人々へ人道援助の手を差し伸べるかどうかの判断材料にすることがあってはならない。人道援助とは、人が人に示す連帯の証(あかし)であり、すべての人が平等であることの証なのだから。
ところが、ホームレスの人々に対して、
「身から出たサビで、あの状況にあるのだから・・・」
「自分で選んだことでしょう」
「本気になれば、路上生活から抜け出せるだろうに・・・」
と批判する人が少なくない。私も、遠くから批判しているだけではダメだと思います。
常に相手に向きあうこと、理解しようと努めること、人々をありのままに受け入れること、互いの違いを認めあうこと、自分の価値観だけで、相手を判断しないこと・・・、これが大切。
子どもにとって学校とは、学ぶ場である前に、仲間と一緒に過ごしながら、社会性、社交性を身につける場である。
ストリートチルドレンは道徳や法の規範からは外れているが、彼らは自立している。彼らに教えなければいけないのは、人に頼ってもいいという事実だ。他人を尊重すること。そして、何よりも自分自身を大切にすること。これこそ彼らが学ばなくてはならないこと。
子どもとは、両親や家族、教師を頼って生きる存在である。そして、自分というものを主張しながら大きくなっていく。思春期になれば、選択すること、理解しようとすること、許容と拒否、許し、そして忘れることを学んでいく。
わずかなひとときであっても、安心して過ごせる時間、尊重してくれる人と過ごす時間は、その一瞬一瞬が成功の証だ。
フィリピンのマニラ地区、カンボジア、タイ、ベトナム、東ティムール・・・、世界各地へ子どもたちの自立を援助して不屈にたたかう組織なのです。
世界各地の子どもたちの実情に目を大きく見開かさせる本(写真もたくさんあります)でした。ぜひ、手にとってごらんください。
(2017年11月刊。1500円+税)

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