弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2018年5月25日

立憲君主制の現在

社会

(霧山昴)
著者 君塚 直隆 、 出版  新潮選書

ナチス・ドイツが降伏し、ドイツの戦後処理を議論したとき、イギリスの外相はこう言った。この外相は労働党に所属する社会主義者であり、労働組合の指導者でもあった。
「第一次世界大戦後にドイツ皇帝の体制を崩壊させなかったほうが良かった。ドイツ人を立憲君主制の方向に指導したほうがずっと良かった。ドイツ人からシンボル(象徴)を奪い去ってしまったから、ヒトラーのような男をのさばらせる心理的門戸を開けてしまったのだ」
果たして、立憲君主制にしておけばヒトラー独裁は成り立たなかったのでしょうか・・・。
2017年現在、国連加盟国は193。そのうち君主制を採用しているのは、日本をふくめて28ヶ国。これに英連邦王国15ヶ国を加えても43ヶ国にすぎない。国連加盟国の2割強でしかない。このように今や共和国による世界連合が実現している。しかし、本当に「世界平和」が確立していると言えるのか・・・。
明仁天皇は、積極的に国民のなかへ入っていった。ところが、これについて天皇は神であってほしいと考える勢力(そのホンネは、天皇なんか掌中の玉として、絶えずうまく操縦しておきたいということなのでしょう)は、あまりに天皇が国民に近づきすぎると、神秘も影響力も失うと心配し、警告した。彼らは、天皇そのものを叩けないものだから、その身代わりとして美智子さんを叩き、今なお雅子さんを叩いているという見解があります。私も同感です。小室家を叩くのも同じ流れでしょう。
君主は、ときとして民衆のところに降りていかなければならない。このことは、ヨーロッパの皇室をめぐる歴史が明らかにしている。しかし、今でも皇室のホームページには天皇一家の団らんの場など、一切の私的要域の行動は報道されない。明らかに不公平である。これでは、「開かれた皇室」とは、とても言えない。
イギリスなどヨーロッパでは、男子優先の長子相続制をやめて、男女を問わず第一子が優先されることになっている(絶対的長子相続制)。
要するに、日本だって江戸時代末ころに女性の天皇がいた。明治になって初めて天皇は男系に限るとしたのです。「歴史と伝統」なんて、100年ぽっちのことでしかありません。
明仁天皇は外国へよく出かけました。皇太子時代には、22回の外遊で、のべ66ヶ国を訪問した。そして天皇になってからは、20回の外遊で、のべ47か国も訪問した。
皇族が次第に減っている現実がある。
天皇に女性がなってはいけないなんで、とんでもない間違いです。あくまで国権・国歌に固執するのもおかしいです。私はいまの明仁天皇は日本が戦争を繰り返さないよう身体をはってがんばっていると考えています。アベ首相に爪のアカを飲ませてやりたいです。ただし、天皇制というスタイルは、将来、変えるべきだと考えています。
(2018年2月刊。1400円+税)

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