弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2018年4月28日

弁護士50年、次世代への遺言状

司法

(霧山昴)
著者  藤原 充子 、 出版  高知新聞総合印刷

高知県での弁護士生活が50年になった著者が、その生い立ちから弁護士になるまでの苦闘の日々を振り返っています。
戦前は高等女学校に入ると、戦争たけなわですから、軍需産業へ女子挺身隊として駆り出され、勉強どころではありませんでした。学徒動員で働いていた工場がアメリカ軍の爆撃で焼失し、恩師も亡くなっています。
戦後は、大学に入ることができず、神戸経済大学専門部に入ります。そして、中学教師になるのでした。英語と高等科目を教え、日記は英語で書いていたのです。すごいですね。私もフランス語で日記を書こうかなとチラッと考えたことがありますが、すぐあきらめました。語学の勉強は毎日それなりの時間を確保する必要があるからです。私は読書のほうを選びました。
教師生活1年半のあと、三菱信託銀行神戸支店で働くようになりました。銀行では男女差別と果敢にたたかい、労働組合に婦人部をつくろうと必死でがんばります。銀行内には、男女差別は当然だという声が強くて、著者が支店で活躍するのを心良く思わない上司がいたようです。残念ですが、本当でしょうね・・・。
銀行で与えられた仕事についての不満から、次第に銀行を辞めて法曹界への転身を考えるようになったのです。著者は苦労したあげく司法試験に合格し、司法修習20期生になりました。同期には、江田五月、横路孝弘、高村正彦、そして宮川光治・元最高裁判事がいます。
著者は、原発と同じくアベ改憲は許さないと叫んで訴え、これまでスモン訴訟をはじめとする大型裁判にはいくつも加わっています。弁護士としての50年の歩みは下巻で紹介されていますので、今から楽しみです。
(2017年6月刊。1389円+税)

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