弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2018年1月15日

明るい失敗

司法


(霧山昴)
著者 原 和良 、 出版  クロスメディア・パブリッシング

 いい本です。読んでいるときから、気持ちが軽くなっていき、読み終わったときには、さっぱりした気持ちになって、さあ、あすはどんなあしたが待っているかなと期待できるようになります。軽い本です。200頁の本に明日から明るく生きていくヒントが満載です。そうか、そういうことだったのか、自分を振り返ることができます。
 忙しいとは、心をなくすと書く。充実した人生を送ろうとすると、人生は本当に時間がない。人は、世の中で大切にされていない、と感じたとき、やり甲斐や充実感を失い、同時に自分の生きている時間を奪われていると感じ、忙しいという感情をもってしまう。
忙しい人に仕事が集中する。なぜか・・・。本当に忙しい人は、短時間で質の良い仕事を仕上げる努力をする。
 忙しい人が忙しいなかで、長期にわたって効率的に仕事を続けるには必要条件がある。それは心身の健康状態を常に最高レベルに保つこと。
 忙しいと思うときこそ、適当なリフレッシュや休息が必要。
 ビジネスで一番大事なのは、貯金ではなく、他者からの信頼の貯金である。
 大なり小なり、人生には思いがけない災難がふりかかってくる。どんな災難がふってかかろうとも、前進するためには、いったんその災難を受け入れ、そこから前に進むしかない。
 他人(ひと)に助けを求めることが必要なときもある。しかし、自分自身に乗り越える覚悟がなければ、他人は助けようがない。
 弁護士である著者は、離婚事件を見ていて、何が幸福かを決めるのは、社会や他人ではなく、その当事者本人であることをつくづく感じると言います。私も、それは同感です。
 そしてまた、著者は弁護士として、たくさんの逆境を見てきた。弁護士の仕事は逆境を引き受け業とも言える、と言います。
逆境は永遠に続くものではない。どんな嵐も時間の経過とともに過ぎ去っていき、乗り越えることができる。
 まったく私も同感です。私は、付け加えると、辛い思いをした依頼者には、しばらく旅に出たらどうですかと進めています。時と場所を変えてみると、なあんだ・・・、なんで、あんなに苦しんでいたのだろう・・・と、自分を客観的にとらえ直すきっかけをつくってくれることがあるのです。
 失敗したときこそ笑いましょう。著者のこの呼び替えに私は大賛成です。人生には笑いが必要です。辛さや悔しさを乗り越えるためには、笑い飛ばす力が欠かせません。
 佐賀県出身で、東京で大活躍している弁護士の本です。映画『それでもボクはやっていない』のモデル事件となった痴漢冤罪事件の弁護人でもありました。一読を強くおすすめします。

(2017年10月刊。1380円+税)

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