弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2017年8月26日

いつも子どもを真ん中に

社会

(霧山昴)
著者 上田 精一 、 出版  青風舎

私と同じ団塊世代はだいたい定年退職し、嘱託として学校教員を続けている人がいるくらいになってしまいました。
著者は、私たちよりさらにひとまわり上の世代になります。中学校の教員(国語)として、子どもたちと格闘していた日々の出来事が昨日おきたことかのように語られているのに驚かされます。
学級通信では、子どもたちの言葉、それに2行か3行そえたコメント、そして親の反応が紹介されています。そして、大切なものは製本して保存してあり、昔の生徒たちが10年、20年して集まったときに贈呈して喜ばれているというのです。こんな教師にめぐりあえた生徒は幸せです。
学級運営で、口を開かなかった子と交流できるようになった話、つっぱっていた生徒との対話、そして、女子生徒たちから、差別しないように申し入れられた経験・・・。どれをとっても、子どもたちを主人公として大切にしてきた教師としての貴重な体験談です。
さらに、沖縄へ修学旅行に行ったときの様子、平和をテーマとして子どもたちが文化祭で劇に取り組み、成功させた様子など、教師冥利に尽きる話のオンパレードで、読んでる私の心を熱くしてくれました。
やっぱり、教師って、人の生き方を変える力をもっている。これって聖職だよね、そう思わせる本でした。
著者は八代市に生まれ、長く人吉の中学校につとめていました。学校教育の現場に関心のある人には強く一読をおすすめします。
(2017年5月刊。2000円+税)

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