弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2017年8月 5日

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ

(霧山昴)
著者 川上 和人 、 出版  新鳥社

かなり人を喰ったタイトルの本です。フザケっ放しの本かと思うと、内容はすごくまともな調査・研究の日々の苦しさ、辛さがあふれています。
好きじゃなかったら、とてもやれそうもありません。だって、無人島に上陸して何日も滞在して、落石注意のために夜ねるときもヘルメットをつけていたり、夜中に徘徊するというのですよ。あげくに耳の中に大きな蛾が入りこんでしまって、翌日まで悶絶しているなんて、すごすぎます。私だったら、絶対にガマンできません。
DNA分析の結果は意外なことが多い。たとえば、小笠原群島のヒヨドリは、伊豆諸島から南下したものではなくて、遠く1800キロの彼方にある沖縄南部の八重山諸島のヒヨドリ由来だ。そして、やや近くの火山列島のヒヨドリこそ伊豆諸島に由来している。ところが、小笠原初頭のヒヨドリと火山列島のヒヨドリとは交雑していない。
これって、不思議なことですよね・・・。
ヤギを人間が肉を食べるために島で飼うと、島の植物をたちまち食べ尽くしてしまう。島の草地が消失し、裸地化していく。だからといってヤギを駆除すると、外来植物が激増する。そして、ヤギに食べられなくなった外来種のクマネズミも増加する。
海鳥の飛翔力は、ケタはずれだ。風に乗れば、1日で数百キロメートルの移動も可能である。
鳥は、なるべく元の繁殖地に残ろうとする。それは、別の場所では必ずよい条件があるとは限らないということ。実績のある場所への執着が鳥の繁殖成功率を高める手段である。
さし絵の鳥の姿を見ているだけでも、心がなごんできます。それにしても、我が家の庭の木で初めて育っていたヒヨドリの赤ちゃんがヘビに食べられたのにショックを受けたことを思いだしました。
元気で、無理せず、引き続きがんばって下さい。
(2017年6月刊。1400円+税)

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