弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2017年6月29日

バラ色の未来

社会

(霧山昴)
著者 真山 仁 、 出版  光文社

日本でカジノが合法化されるなんて、私は夢想だにしませんでした。自民党や公明党の推進派議員は、それこそお金がすべて、お金がもうかれば何をやってもいいという発想なのでしょう。そんな考えで日本の政治をひっぱっていきながら、その反対の手ので、子どもたちへの道徳教育をもっともらしく語るのです。まるで真逆の所業ですよね・・・。
自民・公明党のセンセイ方は、日本中にこれだけパチンコ店があり、ギャンブル依存症の患者があふれているというのに、カジノまで増やして、一体、この日本をどんな国にしようというのでしょうか・・・。私は、それを思うたびに怒りに身体が震えてなりません。
勝てば、もちろんうれしい。だが、それ以上に勝負のテンションを上げるのが、負けたときなのだ。バンカーにしてやられた悔しさ、カネを失う腹立たしさ、さらに自分に賭けてくれた他の参加者に対する申し訳なさも相俟って、我を忘れるような興奮状態に陥る。そして、次こそ勝つとリベンジを誓い、もっと大きく張る。しかし、そうなれば、ただただギャンブルの沼に引きずり込まれるばかりで、勝利の女神の微笑は遠ざかる。
負けが込んだら、そこで止める。そしたらバカな負け方はしない。これは、誰もが知っている理屈。だが、カジノの現場に立つと、それがとてつもなく勇気のいることだというのを思い知らされる。
本質も現実もカジノ誘致なのに、建前というか表面上はIRと呼ぶ。IRとは、国際会議施設やコンベンションホール・テーマパークなどのアトラクション施設等を統合したビジネスとリゾートの融合施設のこと。
実際の富を生み出すカジノは、その一部分にすぎないというのが建て前。この手法はラスベガスで確立され、シンガポールで成功した。トランプ大統領もカジノでもうけた一人でしたよね・・・。
昼間は家族サービスやビジネスに汗を流し、夜はゴージャスな遊びで大人の時間を満喫する。東京都内にIRを誘致したら、1兆5000億円の経済効果が期待できる。外資系の投資銀行の調査報告書には、このように書かれていますが、とんでもないことです。
カジノで潤う街には、独特な雰囲気が生まれる。それは、カジノに群がる人々から放たれる邪気のようなもので、ディーラーをしていると肌で感じる。
カジノには、人間の欲望のたがを外す仕掛けが巧妙に用意されている。よほど理性的な者でも、その仕掛けにはまってしまう。それほど巧妙なのだ。
本書で展開される、日本へのカジノ誘致合戦を背景に、首相とコンサルタントが国民不在で暗躍していくさまは、まるで現在のアベ政権そっくりで、ヘドが出そうになります。
人を不幸にしておいて、自分と家族だけはバラ色にしようとしても、不幸は拡大していくばかりです。カジノの本質的問題点を鋭くえぐり出す社会派小説だと思いました。
(2017年2月刊。1600円+税)

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