弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2017年5月22日

カラス屋の双眼鏡

生物

(霧山昴)
著者 松原 始 、 出版  ハルキ文庫

『カラスの教科書』の著者は、カラスや鳥に限らず、ヘビをふくめて、生き物なら、なんでもござれの生物学者だったんですね・・・。
花粉を運ぶのはハチだけではない。鳥も花粉を運ぶ。サザンカやツバキが冬に大きな花を咲かせるが、島を呼び寄せ、蜜を吸うときに花粉を頭にくっつけて運んでもらう。
ハシブトガラスは巣を隠すことに異常なほどのこだわりをもっている。それでも生物学者は簡単にカラスの巣を見つけるのですから、たいしたものです。
カラスは、ふつう巣から少し離れていて、自分の縄張りが見渡せ、かつ、巣の周辺がよく見える場所に陣取って見張っている。
東京・銀座のド真ん中にも、カラスの巣があるなんて驚きですよね。皇居の森の中にあるんじゃないのですね。丸ビルの前の並木にカラスの巣があるだなんて、信じられません。
縄張りがあると、縄張りのなかに住んでいるのは、ペアのカラスの2羽だけ。
ハシブトガラスは、「カアー」と、ハシボソガラスは「ゴアー」と鳴く。
カラスは、しばしば人の声や物音を即興でまねして返す。ハシブトガラスに比べると、ハシボソガラスは鳴かない。ハシボソガラスが鳴きはじめたら、確実に何かが迫っているということ。
カラスは、鳥や獣を捕らえることに関してはシロウト同然である。手際がよくない。
ヘビの起源は、地中仮説が有力になっている。地中では脚が邪魔になるので退化してしまい、目もウロコに覆われてなくなりかけたが、再び地上に出てきたので、目を覆うウロコが透明になって見えるようになった。
ヘビを見たら、すぐ捕まえる。ヘビやクモに咬まれたらどれくらい痛いのか、黙って手を出して咬まれてみる。うひゃあ、なんということをするんでしょう・・・。とても、ヘビ屋なんかにはなれませんし、なりたくもありませんよね・・・。でも、こんな変人・奇人の学者がいるおかげで、判明したことがたくさんあるわけです。世界の視野を広げてくれる本でした。
(2017年3月刊。660円+税)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー