弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2017年2月 3日

量子コンピュータが人工知能を加速する

社会

(霧山昴)
著者  西森 秀稔・大関 真之 、 出版  日経BP社

 さっぱり分からないなりに、なんか分かるところがあるかもしれない。そう思って、最後まで読みとおしました。
あるようでない。ないようである。そんな不思議な世界が、量子の世界である。
量子コンピュータは、これまでのコンピュータに比べて、1億倍の高速。
量子コンピュータは、1980年代に考案され、開発がすすめられてきた。
量子コンピュータは、量子力学の特徴を生かし、「0」と「1」の両方を重ねあわせた状態をとる「量子ビット」を使って計算する装置。この「0」と「1」を重ねあわせた状態とは、「0であり、かつ1である」状態ということ。これは、直観に反するけれど、フツーの常識が通用しないのが量子力学の世界なのだ。
ただし、量子コンピュータは、ある特定の目的でしか使えない。
量子コンピュータは、これまでのコンピュータとは構造がまったく異なる。CPUなどのプロセッサ(処理装置)、メモリー、ハードディスクなどの外部記憶装置は存在しない。
量子コンピュータでは、超電導回路を絶対零度(マイナス273.15度)に限りなく近くなるまで冷やす必要がある。超電導回路による実現している量子ビットの数は1000以上。小さな回路を絶対零度近くまで冷やすと、右回りの電流と左回りの電流が同時に存在する状態になる。これが2つの状態の重ねあわせになっているということ。重ねあわせ状態は、とても不安定で熱や電磁波などの影響を受けて、すぐに壊れてしまう。
世界中でITが消費する電力は、世界発電量の10%に相当する。これは、日本とドイツの総発電量の合計に匹敵し、全世界の航空機が消費するエネルギーの総量の1.5倍にあたる。
アメリカの大手ローファームでは、人工知能(AI)を導入して膨大な過去の判例から、現在の案件に何を適用するのが最適かを判断している。
量子コンピュータは、カナダのベンチャーが商用化したが、そのアイデアや要素技術には、日本で発明されたものが多く用いられている。
最後まで読んでも、残念ながら納得と理解は得られませんでした。それでも、無駄だったとは思いません。なんとなく別世界が分かったのを良しとしました。
(2016年12月刊。1500円+税)

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