弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2017年1月26日

車いす弁護士奮闘記

司法

(霧山昴)
著者 髙田 知己 、 出版  金融財政事情研究会

著者は茨城県弁護士会に所属する新60期の弁護士です。
高校を卒業してまもなく交通事故を起こし、そのために車いす生活となり、紆余曲折のあと司法試験を目ざして、法科大学院を経て弁護士を開業(即独)しましたが、今では弁護士6人、事務職員7人の法律事務所の所長としてがんばっています。
水戸地裁土浦支部のすぐ隣に事務所を構えていますが、いわゆる町弁(まちべん)です。一般民事、交通事故、労働問題、家事事件、借金問題、そして刑事事件を取り扱っています。恐らく土浦には大企業がないのでしょう。企業間の交渉や買収など、企業法務は掲げられていません。
弁護士の仕事は、人々が人生最大の危機にあるとき、その人の人生や生活に深く入って、一緒に考える仕事。とても大変で労力がいるけれど、その人の新たな出発の手伝いができるところにやりがいを感じる。
仕事だから辛いと思うことも少なくはない。でも、これほどやりがいのある仕事はないと思うくらい、夢中で打ち込める仕事だ。
弁護士は、なんといっても自由な仕事であり、どんな人でも、その個性を生かすことのできる職業だ。
この本では、車いす生活に慣れるまでの状況、そして司法試験を目ざしてからの生活ぶりが紹介されていて、司法試験へ向けてのガイドブックにもなっています。
さらに、車いす生活者からみた現代日本社会のさまざまな不便、問題点が具体的に指摘されています。たとえば、駅の自動改札口は幅が狭くて車いすの人は通れないというのを初めて知りました。
車いすというハンディキャップにめげることなく初志を貫徹して町弁の弁護士として地方都市で明るく元気に活躍している著者の姿には心うたれるものがあります。
この本を読んで、一人でも多くの若者(障がいをもつ人を含みます)が弁護士を目ざしてほしいと念じます。
(2017年1月刊。1500円+税)

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