弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2016年10月31日

人はなぜ星を見上げるのか

宇宙・星

(霧山昴)
著者 髙橋真理 、 出版  新日本出版社

最近はあまり行っていませんが、プラネタリウムは私の好きな場所です。広大な宇宙にいること、ちっぽけな存在であることを実感させてくれる貴重なひとときがそこにあるからです。
そのプラネタリウムや星・宇宙というのを20年も仕事のパートナーとしている女性が書いたロマンあふれる本です。うらやましいですよね、高校生のころの夢を実現できるっていうことは・・・。
北海道大学に入ったときには、オーロラ研究をすると意気込んでいたとのこと。でも、北大はオーロラの研究はしていなかったのでした・・・。そして、アラスカにいる星野道夫に会いに大学2年生のときアラスカへ飛び、ついに蛇のように激しく上空を舞う緑色のオーロラに出会いました。
 私の身近にもアラスカまでオーロラの写真を撮りにいってきた人がいますし、これから行きたいところとしてオーロラをあげている知人もいます。私自身はマイナス40度の寒さに耐えられそうもありませんので、写真で我慢します。
 そして、著者はオーロラの研究ではなく、ミュージアムをつくることを思いたったのでした。それからの行動力がすばらしいのです。好きなことをやって生きていこうという敢闘精神にあふれています。私も、こうやって本を読んで、本を書き、好きなことばかりをして生きています。
 プラネタリウムで星などを見た子どもたちの疑問が面白いのです。はっとさせられる内容です。太陽は沈んだあと、どこに行くのか・・・。地球がまわっているというのになぜ私は落っこちもせず、立っていられるのか・・・。きわめつけは、星は、何のためにあるのか・・・。これって、自分は何のために存在しているのかに通じる疑問ですよね。
小学4年生のとき質問を書いて送ってきた女の子に答えていると、その後も今日まで交流が続いているというのです。すごいことです。
 では、時間はどうか・・・。時間というのは、不思議な存在である。えっ、時間は存在するもの、なのでしょうか。過去というのは、いったいどこへ行ってしまうものか。過去は、どこかへ行ってしまうものなんですか・・・。時間は、無限の過去から無限の未来に向かって一直線に伸びていくものなのか。
プラネタリウムにうつしだされた星空を見て、ある人が天国っていうのは、あそこにあるのかねえ、とつぶやいた。
「きっとそうですよね、たぶん、すごく美しいところだと思います」と答えた。すると、その人は、「そうだよなあ、みんな行ったきり帰ってこねえもんな。いいところなんだよな」と、小さい声で言った。
 そうなんですね。夜の星空の向こうにこそ天国があるんでしょうね。
 宇宙のことを考えていると、その年齢が138億年とか聞かされると、わずか100年も生きていない人間のちっぽけさを感じずにはおれません。
 プラネタリウムに、また行きたいなと思いました。

 
(2016年8月刊。1800円+税)

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