弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2016年10月 8日

物流ビジネス最前線

社会

(霧山昴)
著者 斉藤 実 、 出版  光文社新書

 コンビニは、なるべく利用しないように抵抗している私ですが、宅急便のほうは人並み以上に利用していると告白せざるをえません。
なにしろ、旅行のときにはたくさんの本を携行していて、読み終えると旅先から宅急便で自宅へ送り返します。これから読もうとする本は重くても仕方ありませんが、読んでしまった本まで持ち歩きたくないのです。
今やアマゾンは日本のネット通販の頂点に君臨し、断トツの売上高を誇っている。
 2015年のアマゾンの全世界の売上高は1070億ドル(13兆5400億円)。このアマゾンも深刻な経営危機に直面したことがあった。2000年にネットバブルが崩壊したとき、14億ドルもの大幅な赤字を出している。アマゾンは3万台以上の物流ロボットを導入している。
 アスクルはオフィス用品のネット通販を展開しているが、優れた流システムをもつネット通販に高い競争力が与えられるため、アスクルはとりわけ自家物流に力を入れてきた。
ラストマイル。注文された商品を購入者に届ける配送のこと。圧倒的な多数のネット通販事業者は、ラストマイルの商品の配送を宅配便を中心とした物流業者に委託している、ということはラストマイルでは宅配便が決定的に重要な役割を担っていることになる。
当日配送が拡大しているのは、返品を防止するためでもある。
送料無料が業界の標準になりつつある。送料無料という場合には、送料は販売価格になかに含まれている。アマゾンの売上高1070億ドルのうち、配送料金は115億ドルなので、配送コストは売上高の10.7%を占めている。
 佐川急便は、アマゾンの配送業務から撤退した。採算性を重視したからだ。
 不在によって再送達を余儀なくされる宅配便貨物の割合は2割近く、3.5%は2度以上の配達が必要だった。再配達は、ネット通販のラストマイルを担う宅配便事業者にとって、大きな負担となっている。
 宅配便が始まったのは1976年。初日の取扱いはわずか11個だった。今や、年間36億1400万個に達している。宅配便会社は21にまで減少し、最大手のヤマト運輸が45.4%、佐川急便が33.5%、日本郵便が13.6.%この上位3社だけで93%に近い。
 宅配便のトラックを運転するドライバーが不足している。
 それは低賃金、長時間労働のせいである。製造業の労働者の賃金を100として、トラックのドライバーは90~81にまで下がっている。
宅配便をめぐる状況を少し知ることができました。

(2016年8月刊。740円+税)

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