弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2016年10月 1日

漫画は戦争を忘れない

社会

(霧山昴)
著者  石子 順、 出版  新日本出版社

 大学生のころまではマンガ週刊誌をふくめてマンガをよく読んでいましたが、大学を卒業すると同時に、基本的にマンガからも卒業しました。
 でも、弁護士の仕事に役立つマンガも実際にありますので、今でも単行本は買って読むことがあります。生活保護や介護の現状など、マンガで視覚的に問題状況をつかむことが出来ます。
 大学受験のためには、日本史や世界史もマンガで全巻通読しておいたほうがいいという、奈良の佐藤真理弁護士夫人の指摘には、恐らくそうなんだろうな・・・と思います。
 この本は、漫画で戦争の悲惨さが語りつがれてきたことを振り返っています。
 水木しげるをはじめ、戦争体験者や中国からの引き揚げを体験したマンガ家って、想像以上に多いのですね・・・。
 戦争漫画は、陸、海、空で展開された戦争の激しさ、むなしさを描く。
 過去を知らないと未来はないことを、戦争を見つめ反省しないと平和はないことを、つかみとることが出来ないことを漫画は描いている。
 戦争は、戦場で敵を倒す。人間を殺すことを合法化した争いで、多く倒せば英雄となる。このさまざまな武器をつかって戦うさまをカッコよく描くのが、かつての戦争漫画だった。
 手塚治虫は、8月15日に終戦になったあと、焼跡に電灯がついているのを見て、本当に戦争が終わったことを知り、大喜びした。
 「こんなに感動したことはない。それは、もう40数年たって、まだその感動を覚えている」
 日本に帰ることができて漫画家になったものたちが、その記憶を漫画にしたそこには、二度と戦争を繰り返してはならないという思いがこめられていると同時に、亡くなった多くの子どもや大人への鎮魂の紙碑となっている。
 マンガは大きな力をもっていると思います。反戦・平和の願いをマンガに託して、さらに飛躍させてほしいものです。
 いい本でした。漫画拝論を書いて50年になる著者の最後の本になるかもしれないとありますが、まだまだ元気にがんばってほしいものです。
(2016年6月刊。1000円+税)

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