弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2016年8月21日

前に進むための読書論

司法

(霧山昴)
著者  山口 真由 、 出版  光文社新書

 東大法学部を首席で卒業して財務省に入り、今は弁護士をしている著者が、どんな本を読んできたのか、それを知りたくて読んでみました。
児童文学やファンタジーをたくさん読んでいるとのこと。これはいいですね。もちろん、私も、多少は読んでいますが、著者ほどではありません。ノンフィクションやエッセイにも、私と重なる本は多くはありませんでした。日本と海外の小説も、いくつか重なるだけでしかありません。
でも、私は著者が読書をすすめる文章には、まったくもって同感です。
読書が好きだということは、とても幸せなこと。それは「前に進む力」がすでに備わっているということ。読書には、自分と向き合う力、前に進む力という、とてつもないパワーがある。
著者にとっての読書は、現実の世界から離れること。小説のなかで、まったく違う人生を生きることが出来る。これは、私も実感しています。そうやって弁護士生活40年以上を生きてきました。
実用・合理性・短期的視点だけでは、人間は前に進めない。前に進むためには、実務能力とともに、人間性という推進力が必要。この人間性を育てるためには、読書ほど有用なものはない。
読書をしているとき、本を読んでいる自分自身と主人公になりきろいうとするもう一人の自分をつくる。これが自分と他人との距離感を取るときに、とても有用な訓練となる。
著者にとって、一日の仕事を終えて書店に行くのは至福の時間。1時間から2時間、店内を見てまわる。本は、ネット書店では買わないようにしている。
私も似たようなものです。新聞の書評のチェックは欠かしませんが、書店まわりも大好きです。というか、私の行く店と言ったら、本屋くらいしかありません。あとは、本を読むために喫茶店に入るくらいです。買い物するために店に入るということはありません。
読書と学力は関係している。「読む力」以上に「書く力」が育つことは絶対にない。自分の読める文章以上のものを書くことが出来る人はいない。
忙しいから本を読めない。嘘です。忙しいからこそ、たくさん本を読めるのです。私は、もう20年ほども年間500冊の単行本を読んでいますが、それは忙しくて、気力が充実しているから可能なのです。暇になったら、恐らくとても無理だと思います。
敬愛する著者に対して、歴史の本、そして生物と宇宙の本を、もし読んでいなかったら、ぜひ読んでほしいと思いました。いずれも、人間とは何か、自分はいかなる存在なのかを考えるうえに必要な本だと考えています。
ちなみに、私は自慢するわけではありませんが、大学で「優」をとったのは一つもなかったように思います。大学では3年あまり学生セツルメント活動に没入していて、授業についていけませんでした。ですから、全「優」なんて、どうやったら取れるのか不思議でなりません。
(2016年7月刊。740円+税)

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