弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2016年7月27日

刑罰はどのように決まるか

司法

(霧山昴)
著者  森 炎 、 出版  筑摩選書

 日本では、「犯罪者は刑務所行き」という定式はまったく成り立っていない。検察庁が受理する「犯罪者」は年間160万人前後で、そのうち6割が不起訴となり、刑務所に入るのは3万人弱、比率として2%弱でしかない。有罪になってもその6割は執行猶予となっている。
 刑務所に入れた場合であっても、早く仮釈放すればするほど、それだけ再犯は少なくなるという関係にある。満期までつとめたほうが再犯率は高い。
刑務所生活が長ければ長いだけ、社会への適応は困難になる。
日本の再犯率は40%。治安の維持にとって、初犯者よりも再犯問題の占めるウェートは大きい。近年、初犯者の数は順調に減り続けている。
刑務所では、衣食住、医療費、光熱水道費すべてを刑務所がまかなっている。一人あたりの年間費用は46万円。
日本で定められている法定刑は必ずしも合理的ではない。日本では、10年前まで殺人よりも現住建造物放火のほうが重かった。
殺人罪の受刑者の平均刑期は7年。殺人罪の量刑相場は、20年前は懲役8年、10年前は懲役10年、そして現在は懲役13年となっている。
アメリカの調査によると、殺人の3分の2は親しい知人間で起きていて、そのうちの8割は家庭内で発生している。女性は寝室で殺され、男性は台所で殺される。日本では、行きずりの殺人は稀。
コンビニ強盗が強盗犯の主流になっている。日本で銀行強盗は少なく、銀行から預金をおろして帰る人を途中で襲う「カモネギ待ち」強盗が多い。
被告人は裁判所の法廷で「反省している」と述べさせられる。しかし、法廷で良心にしたがって本心を言うと刑を重くされる。裁判所に迎合する虚飾の演技が強要される。日本の裁判所は欧米の教会のようなもので、裁判官は説教師で、被告人がざんげないし改悛の情を述べると、罪一等が減じられる。
元裁判官による本なので、裁判所の内部の動きを垣間見ることが出来ます。
                                    (2016年1月刊。1600円+税)

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