弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2016年7月13日

ほんとうの法華経

日本史(古代史)

(霧山昴)
著者 橋爪 大三郎・植木 雅俊 、 出版 ちくま新書 

法華経は最高の経典である。最澄の伝えた天台宗が、そう教えている。法然の浄土宗も、親鸞の浄土真宗も、日蓮の連宗も、天台宗から分かれている。道元も、晩年は、法華経に心服した。つまり、わが国の仏教の大部分は法華経を最高の教典と考えている。
法華経は釈尊が最後の、いちばん大事な時期に説いた、とっておきの大切な教えなのである。
日本に伝わった法華経は、漢文だった。鳩摩羅什が5世紀の初めころ、サンスクリット語を漢訳したもの。
200年前に発見されたサンスクリット語の法華経原本を徹底的に読み解き、鳩摩羅什の漢訳とも照らしあわせて、読みやすい日本語としてよみがえらせたのが植木雅俊博士である。
法華経が最高の経典と言われるのは、人間は誰でも差別なく、一人残らず成仏できると説いているから。この教えを「一仏乗(いちぶつじょう)」と言う。
原始仏典で、釈尊は、「私は人間である」「皆さんの善き友(善知識)である」と語っていた。その覚りも、「まのあたり即時に実現される、時を要くない法」とされていた。
法華経は、お釈迦さまの滅後500年たってから編纂されている。お釈迦様の直説ではない。法華経を釈尊が説いたのは、72歳から80歳までの8年間かけてのこととされている。
自業自得というのは自己責任論で、決定論ではない。神さまや、他の人によって決められたものではない。自分の主体的な自由度に応じて、過去の様相が変わっていく。
法華経は、人間はもともと菩薩であり、ブッダになる可能性をそなえているから修行しなさいと説く。法華経は、すべての人を成仏させる教典である。法華経は、あらゆる人がブッダになれると主張した。
お釈迦さまが亡くなって100年たって小乗仏教になり、400年たったころ大乗仏典が登場してくる。
お釈迦さまは、金もうけはどんどんしなさい。ただし、富を得て蓄積しているだけでは無意味である。得た富を独り占めせずに、自分も活用し、他人にも振り分けて活用させ、社会に還元しなさいという立場をとった。
仏教は、もともとカースト制を否定する立場で、むしろそれを乗り越えていこうとしていた。
一辺が15キロメートルの立方体の岩を100年に1度、絹のスカーフで払って、岩がすり減ってなくなってしまう時間を、一小劫という。こんな長い長い、気の遠くなるような時間の単位があるのですね・・・。
声聞、独覚、女性、悪人、畜生に授記を与える経典は法華経だけ。
仏教では、「人を殺してはならない」というのは絶対的な原理である。自分は危害を加えられるのが嫌だから、他の人々も嫌だろうと考える。
男女の差別をしないのは、法華経の前提。しかし、極楽浄土には女性がいない。男性も女性も住生したら、みな男性になる。仏国土に女性の存在を認めたのは、法華経ともう一つあるだけ。
仏教は、もともと最下層の人々に寄り添う思想だった。キリスト教会において、神殿と教会は違う。教会は神のいる場所ではなく、信徒が祈る場所。
率直に読んでいけば、法華経の中心的な菩薩は、地涌の菩薩と不軽菩薩であることが分かる。
法華経で説かれているものが、ほんの少しだけ分かりました(そのつもりになりました)。
(2015年10月刊。1100円+税)

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