弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2016年7月 9日

日本会議の研究

社会

(霧山昴)
著者  菅野 完 、 出版  扶桑社新書

 安倍首相を支えている一群の人々がなんと改憲どころか反憲そして明治憲法の復活を目ざしているというのです。呆れてしまいました。
自民党の改憲草案は天賦人権説をとらないとしています(解説書)。これは基本的人権の尊重は法律の範囲内とするということです。つまり、基本的人権は権力の命じるところによっていくらでも制限できるとします。
 「最終的な目標は明治憲法の復元にある。しかし、いきなり合意を得ることは難しい。だから、合意を得やすい条項から憲法改正を積み重ねていくのだ」
「保守革命」は、歴史認識、夫婦別姓反対、従軍慰安婦、反ジェンダーフリーの4点に課題を集中している。
安倍政権は日本会議によって支えられている。日本会議と日本青年協議会は目黒区にあるオフィスビルの同じフロアーに本部を構えている。両者は間仕切りもない。日本青年協議会の会長である椛島有三は、日本会議の事務総長をつとめている。
 元最高裁長官(三好達)が日本会議の代表でしたよね。恥ずかし限りです。この本には、現在の寺田逸郎長官も退官したら日本会議の代表に就任するのだろうか・・・と、心配しています。万一そんなことになったら、とんでもないことです。やめてほしいです。
 椛島有三は、「生長の家」の信者として長崎大学を右翼的に「正常化」した実績をもとに中央で活躍するようになりました。そして、現在、日本会議の実務を取り仕切っている人物には、「生長の家」出身者が多いようです。
 もっとも、現在、「生長の家」は、こうした右翼的活動を一切停止し、むしろ先日、安倍政権に反対し、野党を支持するという声明を公表しています。敬意を表します。
 日本会議の実体とその人脈を探り出した貴重な新書です。
(2016年6月刊。800円+税)

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