弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2016年5月30日

ちっちゃな科学

人間

(霧山昴)
著者  かこ さとし、福岡 伸一 、 出版 中公新書ラクレ 

 かこさとしは、セツルメント活動の大先輩です。私は大学生のころに3年ほど、かこさとしは大学を卒業して、会社に勤めながらセツルメント活動をしていました。
そして、かこさとしの絵本には、うちの子どもたちも大変お世話になりました。「からすのパンやさん」や「どろぼうがっこう」などは、読んでいる大人も面白い絵本でした。もちろん、100万部をこえるベストセラーである「だるまちゃん」シリーズの絵本もいいですよ・・・。
90歳になる、かこさとしが手がけた絵本は、なんとなんと600冊。すごいですね。すごすぎます。目を悪くして、絵を描くのはやめたそうですが、本のほうは、今も原稿を書いているとのこと。いやはや、たいしたものです。あやかりたいです。
セツルメントというのは、ボランティアで子どもに勉強を教えたり、医療相談や法律相談をする組織。
私が大学生のころには、全セツ連(全国学生セツルメント連合)という組織があり、年に1回、全国大会を開いて経験交流していましたが、全国から学生が1000人ほども集まり、活気あふれる交流会でした。夜行列車に乗って東京から名古屋に行ったことを今も覚えています。私は子ども会ではなく、青年部に所属していて、若者サークルに入って、楽しく べったり、ハイキングや早朝ボーリング大会などをしていました。ところが、そんなサークルもアカ攻撃がかかってきたりして、社会の厳しい現実に学生は直面して、目を見開かされていくのです。
かこさとしが繰り返し「大勢」を描くのは、自分が世界の中心にいるとはとても思えないから。この世界は多様であり、自分はどこか端っこにいる。でも、端っこでも、そこは世界の中なんだということを言いたいから・・・。
かこさとしの絵本には、余白、何も描いてない空白の部分がたくさんある。そこは、子どもたちが想像力を広げるための「延びしろ」としての余白である。
子どもたちが理科離れしているとしたら、それは大人が理科離れしているからだ。
子どもの本が売れなくなっている。なぜか・・・。日本の母親が子どもの本を買わなくなったからだ。ええっ、子どもの本まで売れてないのですか、知りませんでした。そう言えば、昔ほど、絵本が話題にならない(なっていない)気がしますね。
「花咲き山」とか「八郎」とか、日本には本当にいい絵本がたくさんありますよね。ぜひ、子どもたちに語り伝え、読み聞かせたいものです。
(2016年4月刊。800円+税)

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