弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2016年5月17日

ルポ・老人地獄

社会

(霧山昴)
著者  朝日新聞経済部 、 出版  文春新書

有料老人ホームは高くて入れないために、無届け有料老人ホームが増えている。
2025年問題が迫りつつある。戦後生まれの団塊世代が2025年には75歳以上の後期高齢者となり、高齢者の医療や介護の問題が深刻になる。
最近、定員10人までの小規模デイサービスの事業者が、「お泊まりデイ」と呼ばれるサービスをすることが急増している。それは、単純計算で月々300万円が事業者の収入になるから。
厚労省によると、2013年度までの7年間に、通常のデイサービスが5千ヶ所ふえたのに、小規模は1万1000ヶ所も増えた。
特別養護老人ホーム(特養)には、なかなか入れない。全国に8000施設、定員50万人というが、入居待ちしている人も同じく50万人はいる。
特養や老健施設において、職員による「虐待」が2割弱で起きている。その背景には、人手不足と過重労働がある。そこからくるストレスが「虐待」につながっていくのです・・・。
サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)は、特養の不足などに対応するため、2011年に制度が始まった。1部屋あたり100万円。建設費の補助や税の軽減があるため、制度が始まってから全国で6000棟の19万戸に増えている。
東京では退院後の行き場がない高齢者が多くいる。都外は安く施設をつくれるので、所得の高くない高齢者を救うことができ、それがビジネスにもなる。つくば市が「サ高住」の入居者を調べてみたら、都内23区で生活保護を受けている人ばかりだった。
受け入れ先のない高齢者が増えている。とりわけ深刻なのは、認知症の高齢者だ。
65歳未満で認知症を発症する若年性認知症も3万8千人の患者がいる。
介護職は、深刻な人手不足にある。人手不足のため職場環境が悪化し、さらに人が減っていくという悪循環に陥っている。
介護の現場では、介護福祉士の資格が重視されているとは言い難い。
介護は人件費の割合が高いため、経営者としては人件費を下げたくなる。しかし、それは人を大切にしないことになるので、結局は人が集まらず、うまく回らなくなる。
介護の現場では、好景気とは裏腹に経営難と人材不足が深刻化している。
社会福祉法人の一部では理事長たちが高齢者を食いものにしている。ファミリー企業を通じて巧みに規制を逃れ、巨額の利益を手中にしている社会福祉法人の幹部たちがいる。
若者と同じように老人も大切にされる社会であってほしいものです。大企業本位、なんでも自己責任の社会では弱者が切り捨てられるばかりで、夢もチボー(希望)もありません。
(2016年2月刊。780円+税)

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