弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2016年5月 5日

ザ・町工場

社会

(霧山昴)
著者  諏訪 貴子 、 出版  日経BP社

 読んで元気の出る、町工場の話です。まだ若い女性社長の下で、若手から70歳すぎまで働いている精密加工業の中小企業での奮闘努力の過程が惜しみなく公開されています。なにより表紙の写真がいいですね。みんな目が生き生きしています。
 社員34人のうち20代が11人、30代が10人、40代が6人、50代以上が7人。ところが、この会社では定年が70歳。65歳になったら給料は20%減だが、70歳までは同額、そして70歳を過ぎても本人が希望するなら働き続けられるといいます。現に70歳すぎの人が3人も働いているというのです。これは驚きましたし、敬服します。前に、アメリカの小さな会社に、そんなところがあったのをこの欄で紹介しましたが、日本でも同じようなことを実践している会社があるのですね・・・。
 それにしても若者が入社して、定着率もいい。そのなかで会社がつぶれることもなく業績を伸ばしているなんて、すごいことです。そこには、どんな秘訣があるのでしょうか・・・。
 未経験者をゼロから育てる。求職者は3か月間、お試し期間として働いてもらい、ハードルを下げる。採用面接は社長がする。そのとき重視するのは、ヒューマンスキルの高さ。誰とでも親しく接することのできるコミュニケーション能力、素直さ、謙虚さ、向上心。このニューマンスキルがあれば、早くから周囲に溶け込み、技術も知識も短期間で習得できる。学歴は一切関係ない。
自分の短所が答えられない人は採用に至らないことが多い。ネガティブに答える人もバツ。後ろ向きの発想では何事も良い方向には進まない。
誰が見ても優秀な人材は、すぐには採用しない。他社を見たうえで、自らの決断で入社した社員は決してすぐには辞めない。
 未経験の新人にも、いきなり本物の製品の加工をさせる。練習では緊張感がないし、集中しないので、一向に上達しない。
入社して1ヶ月間、社長と大学ノートで交換日記をつける。それで毎日の様子を見る。
職場を楽しい雰囲気、居心地のいい空間にする。2年に1回は社員旅行に出かける。
法律事務の活性化にも大いに役立つような内容の本でもありました。
 日本の中小企業の底力を確信させてくれる本でもあります。引き続き、がんばってくださいね。
(2015年6月刊。1000円+税)

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