弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2016年3月22日

ひとと動物の絆の心理学

生物

(霧山昴)
著者 中島 由佳 、 出版  ナカニシヤ出版

 私は犬派です。というのも、物心ついたときから、ずっと犬と一緒に生活してきたからです。それは高校生まで続きました。大学に入って、愛犬(ルミといいます。スピッツのオスです。座敷犬でした)が車にはねられて死んだことを聞いて、本当に残念でした。それでも、大学に入って忙しかったので、ペットロスにはなりませんでした。そして、子どもたちが小学生になったとき、柴犬を飼いました。メスなのに、マックスと呼んでいました。私の責任なんですが、室外に飼っていてフィラリアにやられて死なせてしまいました。申し訳ないことです。
 私の小学生のころには小鳥の飼育も流行していましたし、鶏も飼っていました。ニワトリのエサになる雑草をとってきたり、貝殻を叩きつぶすのも小学生のころの私の仕事でした。生来、生真面目な私は、一生懸命、ニワトリの世話をしていました。そして、父が飼っていたニワトリを「つぶす」のも、しっかり見ました。そのおかげで、ニワトリの卵の生成過程も、この目で確認することができました。娘が小学生のころ、ウナギを催物の会場で釣りあげ、家で飼いたいと言ったとき、私はダメと言いました。そして、慣れないまま、ウナギをさばいてウナギの蒲焼きをつくってみました。泣いていた娘も食べてくれました。
 日本人で動物を飼っている世帯は全世帯の3分の1。そして、犬と猫が人気だ。犬は6割、猫は3割を占める。犬も猫も、今では8割が室内飼い。
 一昔前までは、犬は番犬として屋外の犬小屋で暮らし、猫はねずみ獲りと近所のパトロールが日課という生活スタイルだったが、今やほとんど見られない。今では、犬も猫も、8割が家の中で家族と一緒にヌクヌク暮らしている。
人は動物と「会話」をする。人は社会的な生きものだ。たしかに自分のことを話したい。自分のことを話して理解してもらえることで、心の健康を保つことができる。
 動物が友人と家族とは違うのは二つある。一つは、傾聴してくれること、もう一つは評価しないこと。つまり、ありのままの自分を動物はしっかり受けとめてくれる。
 動物とのふれあいが、病気の人の生存率を伸ばすことも実証されている。人生にストレスはつきもの。しかし、動物の存在が、ストレス度の高いできごとによる心身のダメージをある程度は防いでくれている。
犬とのふれあいは、やはり愛犬とのふれあいが一番。飼い主とその犬とのふれいあいこそが強い愛着で結ばれている。
 非行少年や情緒障害の子どもにとって、動物は、ワン・アンド・オンリーの存在なのだ。つまり、彼らにとっては、動物こそ唯一の「家族」だった。逆に言うと、児童虐待や配偶者に対する家庭内暴力(DV)には、しばしば脅しや見せしめとしての動物虐待や殺害をともなっている。
 子どもたちが、幼いころから小鳥や犬・猫の世話をするというのは、とてもいい原体験になると思います。手抜きしたり、へますると、小鳥や犬・猫が死んでしまうという重大な、取り返しのつかない結果を生じさせるからです。
 子どもたちが大きくなってからは、旅行優先のために、犬を飼うのはあきらめています。
(2015年12月刊。1800円+税)

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