弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2016年3月 2日

ふしぎな君が代

社会

(霧山昴)
著者  辻田 真佐憲 、 出版  幻冬舎新書

  私は、君が代をまともに歌ったことなんて、一度もありません。歌詞も嫌ですが、なにより、あの暗さがたまりません。晴れの儀式に暗い、心を沈ませるような歌を強制するなんて、付きあっておれません。君が代は法律で国歌と定められましたが、どれだけの日本人が愛着をもっているでしょうか・・・。
  学校での強制は、とんでもないとしか言いようがありませんが、会社でも実社会でも、こんな歌を斉唱するなんて、ないのではありませんか・・・。
  この本を読んで、君が代について、いくつも新発見をしました。君が代という歌を日本人が広く国歌として歌っているのは、戦前も末ころのことなんですね・・・。そして、国歌斉唱を義務付ける国なんて、ごくごく例外なのですね。
  日本政府は、戦前、君が代を国歌だと明らかに宣言したことはなかった。君が代が日本全国に行きわたるには、かなり長い時間がかかった。
  君が代は暗いという批判は既に明治34年には出ていた。君が代の歌い方は、昭和になってようやく統一された。君が代が神聖不可侵のシンボルとなったのは、昭和12年(1937年)の国定教科書以降のこと。つまり、全国の教育現場で、君が代が明確に位置づけられたのは1937年以降でしかない。これって終戦(敗戦)まで、あとわずか8年しかありませんよ・・・。
  今の天皇は、国旗・国歌について、「やはり、強制になるということではないことが望ましい」と明言しています。素晴らしい明言です。まったく同感です。
  サッカー選手の中田英寿が、「国歌、ダサイですね。気分が落ちていくでしょ。戦う前にうたう歌じゃない」と言ったそうですが、私も同感です。やめてよ、という感じです。
  欧米の先進国で国歌斉唱が義務づけられている国はない。例外なのは、中国と韓国。だから日本は、中国や韓国にならっているだけ・・・。
  古歌「君が代」はおめでたい歌として、日本文化に根付いていた。そして、この「君」は天皇に限らず、「将軍家」でもありえた。
  君が代の作曲者は、日本人の奥好義を原作曲者としつつ、フェントン、林広李、エッケルトなどの合作だった。フェントンはイギリスの軍楽隊長だった。エッケルトはドイツ人。
  君が代って、英独のセンスが入った歌なんですね・・・・
  ともかく、子どもたちに学校で君が代の斉唱を強制するなんて、愛国心を育てるどころではない愚行そのものだと思います。

                (2015年7月刊。860円+税)

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