弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2016年2月10日

日本を壊す政商

社会

(霧山昴)
著者  森 功 、 出版  文芸春秋

 人材派遣業で名を成しているパソナの南部靖之の実像に迫っている本です。
 人材派遣って、昔の口入れ業ですから、ヤクザな稼業です。そんなのは違法に決まっている。私が弁護士なりたてのころには、そのことに疑問の余地はありませんでした。
 ところが、それは少しずつ自由化され、今や原則と例外が逆転してしまいました。
若者が大学を卒業しても正社員になれない。派遣社員であったり、アルバイトやパートであったり、長期安定雇用が期待できなくなってしまいました。その結果、結婚できそうもない低賃金・長時間労働を余儀なくされ、過労死するのも珍しくない社会になってしまいました。
 すべては「規制緩和」のせいです。そして、超大企業とそのトップたちは、アメリカ並みのとんでもない超高級取りになっています。格差の増大です。
パソナの南部靖之が切望してきた労働の自由化という政策転換は、非正規労働の増加と格差の拡大という暗い社会変化を招いている。
 戦前からある口入れ業は、暴力団と深いつながりをもっている。日本社会に人材派遣という言葉が定着したのは、1973年の第一次オイルショック以降のこと。パソナの前身であるワンパワーセンターが設立されたのは1976年。1993年に今のパソナという社合になった。
 パソナの会長は、あの竹中平蔵。典型的な御用学者です。いつだって権力のお先棒をかつぎ、莫大な利権を自分のものにするのに長けた男として有名です。前にもこのコーナーで本を紹介しました。思い出すだけでも腹が立ちます。
 労働者派遣法は1986年に施行された。これもアメリカの強い圧力の下で実現したもの。日本の支配層は、ここでもアメリカの言いなりになって動き、その「成果」を自分のふところに入れて、ぬくぬくとしています。
 労働者派遣法は、スタートしたときには、それなりに業種が制限されていたものの、やがて、原則と例外とが逆転させられるようになりました。
 労働の自由化という旗印の下、将来の展望が開けないまま、日本社会が壊れていく・・・。
 そうならないように、私も微力を尽くします。
                           (2015年11月刊。1500円+税)

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