弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2016年1月26日

ぼくらの民主主義なんだぜ

社会

(霧山昴)
著者  高橋 源一郎 、 出版  朝日新書

 朝日新聞の「論壇時評」が本になっています。私は「朝日」の読者ではありませんので、初めて読みましたが、同感、共感することばかりの「時評」でした。
 「なんだか、この職場、暗いですね」
 「労働運動がなくなったからね」
 「労働運動って、何ですか?」
 「みんなで上を向くことかな」
 いまや、ストライキとか労働運動っていう日本語は残念なことに死語に等しいですよね。私が弁護士になったばかりには1週間の交通ストライキがあり、大変でした。そして、労働組合とか「連合」というものの存在感も、ほとんどなくなってしまいました。本当に残念です。ですから、労働三権、労働者の団結権、団体行動権、団体交渉権なんていうのも、聞くことがほとんどなくなりました。本当に、そんな日本でいいのでしょうか・・・。
 派遣社員とパート・アルバイトばかりの職場。たまにいる正社員は過労死寸前だなんて、おかしくありませんか。そして、経営者はカルロス・ゴーンの年俸10億円、オリックスの宮内義彦の退職金50億円なんて、間違ってませんか・・・。
 世界で入学入試の試験をやっている国は、ほとんどない。ええっ、ホントですか・・・?
 日本のパパやママは、世界の平均の2~3倍もお金を払わされている。
 いまどきの大学生は、アルバイトの拘束力が強くて、テスト前でも休めない。だから、ゼミでコンパや合宿をしようと思ってもなかなか出来ない。
 親からの仕送り額は16年間で、3割以上も激減し、奨学金は有利子の学生ローンになっている。そのうえ、就職先は正社員ではなく、非正規労働。夢も希望も奪われている。
 軽井沢スキーバスの事故も、そんな大学生たちが、少しでも安く楽しみたいと考えたものなのです。彼らを責めるわけにはいきません。社会のしくみがおかしくなっているのです。
 今の政治は、みんな無知でいようぜ、楽だから、というメッセージが蔓延している。政治家のレベルは低い方が好ましいし、それを意識下で熱望している。
 アベ首相の支持率が4割をこえるという現実は、現実を知らされず、知らないで、幻想に踊らされ、イメージだけで自分の考えをもっていると思い込まされた人々が、それだけ日本人に多いということを意味しているのでしょうね。本当に怖い世の中になっています。
 それでいいのかと警鐘を鳴らしている本です。手軽に読めて、気が重くなってしまう本でした。

(2015年10月刊。780円+税)

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