弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2016年1月19日

日航機事故の謎は解けたか

社会

(霧山昴)
著者  北村行孝・鶴岡憲一 、 出版  花伝社

 30年も前の夏の悪夢のような出来事でした。520人が乗ったジャンボジェット機が墜落して、助かったのは女性ばかり4人のみ。
 月に1回以上、飛行機に乗っている私にとって、とても他人事とは思えない惨事でした。
 アメリカ軍のミサイルに追撃されたという説に私も心が惹かれた時期があります。それほど、謎に満ちた事故でした。そして、今でも救出が遅れたことには大いなる疑問があります。
 本書は、ボーイング社の修理ミスによって発生した大事故だったことを論証しています。
 それにしても、アメリカ言いなりに動く日本政府に腹立たしさを覚えてなりません。
 このジャンボジェット機が迷走している様子を奥多摩でカメラで撮った人がいた。その写真をもとに画像を解析すると、垂直尾翼面積の58%を失った状態で飛んでいたことが判明した。
 修理ミス部分の隔壁破断面に披露亀裂が発生した。かろうじて持ちこたえていたリベット接合部が、事故発生の8月12日午後6時24分すぎ、客室与圧と外気圧の差が0.59気圧にまで高まった段階で耐え切れずに一気につながって、長大な亀裂となった。
 尻もち事故後の修理において、直径4.5メートルのドーム状をしたアルミ合金製の圧力隔壁の下半分に損傷が目立ったため、上半分は既存のものを使い、下半分を新しいものに取り換えた。このとき、本来なら一枚板でつながらなければならない修理箇所を2枚にしてしまった。
 圧力隔壁の修理において、気密性が強く求められることから、強度よりも気密性を優先させて、1枚の板をわざわざ2枚に切りわけて1枚を隙間埋めに使った。
3年間の調査のなかで、275機の機体から1054件の亀裂が発見された。このうち事故機と同じB747の亀裂が714件と68%も占めた。与圧による疲労亀裂に弱い機種であることが明らかになった。
 そして、航空機整備が「金のかからない整備」になっていった。
 B747は、機首部を2階建てにしたため洋ナシ状の断面となり、不均等な複雑な力を受けがちである。
 私も2階部分の座席にすわったことがありますが、あまり乗り心地のいいものではありませんでした。やはり、洋ナシ型よりも真円形のほうが強度があるのですね・・・。
 それにしても、「格安」で飛んでいる飛行機の安全性はどうなっているんでしょうか。安かろう、悪かろうでは困りますよね。乗り物は、快適性の前に安全性です。心配性の私はいつも祈る思いで飛行機を利用しています。
 なんでも安ければいいという社会風潮は、ぜひ改めてほしいと痛切に思います。

(2015年8月刊。2500円+税)

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