弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2016年1月11日

老人に冷たい国・日本

社会

(霧山昴)
著者  河合 克義 、 出版  光文社新書

 いつのまにか私も年金をもらうようになりましたので、立派な老人の一人です。
 日本という国は、アメリカ製の軍艦や飛行機などは超大金を出して惜しみなく買うくせに、福祉となると一変してケチケチです。本当に老人に冷たい国だと思います。
 孤立は、貧困と切っても切り離すことができず、貧困が孤立を生み出している。家計が苦しくなると、交際費が縮小する。親族、近隣そして友人関係が切れると、孤立化を生み出している。家計が苦しくなると、交際費が縮小する。親族、近隣そして友人関係が希薄化し、また切れてしまう。関係が切れると、孤立化をもたらし、その人の問題は親族にも地域にも友人にも分らないという状態を生む。こうして問題が潜在化する。
 ひとり暮らしの高齢者が日本全国に600万人いる。そのうち300万人は生活保護基準以下の生活をしている。生活保護を受けている一人暮らしの高齢者は70万人いるので、残り200万人あまりが生活保護を受けずに生活している。
 2000年以降、孤立死・餓死がそれ以前よりも増加している。
 2000年4月に介護保険制度がスタートしてから、それまでの高齢者福祉の行政サービスは大部分が民間事業者に委ねられた。こうした変化のなかで重大な問題は、行政による高齢者問題の把握力を低下をもたらしたことである。
 このシステムは、比較的生活が安定している高齢者にとっては身近な制度となったが、自分から声を上げない人々にとっては、制度との距離が大きくなった。
 高齢者の生活基盤が脆弱なために、親族・地域から孤立し、ひっそり亡くなっていく人が後を絶たない。それは高齢者だけの問題ではない。日本の社会、社会保障・社会福祉制度は大切なものを欠落させているのではないか。
 緊急に対応すべきは、国民生活に一定のミニマム基準が設定され、各制度がその基準を下まわらないように全体的に調整することである。
 先進国のなかで、日本ほど「老人に冷たい国」はない、とつくづく思う。
 アメリカは果たしてどうなのかと疑問に思いますが、ヨーロッパ各国と比べて福祉が遅れていることは間違いありません。自民・公明の政権は、軍事予算を5兆円以上にどんどん増やす一方で、福祉予算を大きく減らしています。守るべきは「国」ではなく国民生活です。優先順位が間違っているのだと私は思います。


(2015年7月刊。760円+税)

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